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妖怪・風習・伝奇

たちさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

危険な夜
短編 2025/01/02 01:26 744view

私の故郷は田舎町にあり、商店が数店舗ある程度で隣町まで行かないとコンビニがないような所です。
その町には昔から伝わっている奇妙な風習がありました。

5年に1度、3月1日の晩に町民は夜の21時には自宅の電気を全て消し、朝まで就寝すること。
ただそれだけ。
しかし、多くの町民は町を出て隣町で宿泊するか親族の家に泊まりに行ったりしていました。なので、その日の晩は町には誰もいなくなります。
昼間は、町の大人達が集まり神社でお祓いなどをしてもらい、子供達は学校が終わると家族全員で神社に行き御守りを渡されて次の日まで肌身離さず持ち続けていること。
これを5年に1度だけ行うのが私の故郷に伝わる風習です。

私は18歳までに3度、この風習を経験しています。1度目は幼少期だったので特に気にすることなるお泊まりができるということで楽しかったです。
2度目は小学生の高学年の時に経験しました。
その時、今でも鮮明に覚えている出来事が起こりました。

その日は朝から親に学校が終わったら神社に行くよ。いとこの家に泊まりにいくよ。と言われていました。

学校が終わり、家族と神社に行き御守りを渡されて帰宅し、宿泊の準備を済ませ自宅を出ました。
車で移動中、2年前に引っ越してきた同級生の工藤君の家の前を通るとまだ電気が付いていたことに気がついたが、
「あ、まだいたんだ。もう少しで出るのかな。」と思う程度でした。

翌日、町に戻ると工藤君の家の周りで大人達が集まっているのを見つけた。
それを見た父も車を止め、工藤君の家に向かったので私も付いて行きました。
家の前で大人達と話をしてる母親と一緒に工藤君がいたので、
「どうしたの?」と聞くと、
「うん…お父さんが救急車で運ばれて。」
驚いている私の横で大人達が工藤君の母親と話をしていました。

昨夜、工藤君の家族は家で過ごすことにしていたみたいで21時には電気を消して就寝したとのこと。すると、3時頃に父親の叫び声が聞こえて家族全員が目を覚まして父親の元に行くと両手で顔を覆っていたそうで、母親がどうしたの?と聞くと、
「目が…目が…」と言っていたので父親の手を退けてみると片方の目がおかしくなっていたそうだ。急いで救急車に連絡をして、父親に事情を聞いてみると、

「夜中にトイレに起きて、タバコを一本吸っていた。すると外から変な音がしたので耳を澄まして聞いていると、何かが町を歩いてるようで鹿かと思った。カーテンを少し開けて見てみると、鹿ではなく、人影が見えて、目が合った瞬間に少し怒っているように見えたから急いでカーテンを閉めて、布団に戻ろうとしたら窓をコンコンと叩く音がした。外から、「工藤さん、工藤さん」と呼ぶ声がして近所の人だと思って安心してカーテンを開けるとそこには知らない人?が立っていてその瞬間から目に激痛が走り叫んだ」という。

私の父親は他の大人達と何やら相談事をしていたので私は車に戻り父の帰りを待っていました。しばらくして、父が戻ってきたのでどうだったのか聞いてみました、
「工藤さんはどうやら、夜中起きた時に御守りを枕元に置いてたらしい。お前はあと1回、この風習を受けないといけない。今まで通りに私達の言う通りに過ごせば大丈夫。もちろん、御守りも持ってな。」
とだけ言って帰宅しました。

5年後、私は最後の風習を無事に済ませた後に卒業し、故郷を離れました。
これで奇妙な風習から解放されたと思うととてつもない安心感でした。

しかし、町の掟はもう1つ存在していました。それは、故郷で風習が行われてる時は、その町の出身者は御守りを肌身離さず持っていなければいけないということです。
このことは、故郷を離れる時に両親から必ず守るようにと何度も言われていました。
「私達が生きているうちはお前に連絡すればいい。だか、私達がいなくなったら自分で覚えておかないといけない。だから、若いうちから忘れないよう意識して過ごしていけ。」と父に言われていました。
「わたってる。もし、御守りを身につけていなかったらどうなるの?」と父に尋ねると、
「お前もわかっているだろう。よくないことが起こる。」とだけ言っていました。

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