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君尋さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

男尊女卑の意味
短編 2025/04/06 20:32 1,397view
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皆さん、「男尊女卑」って言葉、ご存知ですよね。
多くの場合、悪い意味で使われる言葉です。でも、私の祖母の使い方は違いました、「女の方が優れてる」的な意味合いで使ってたんです。これは、そんな祖母から聞いたお話です。

祖母が生まれたのは、山間の農村。
戦争の被害は比較的少なかったものの、戦後まもなく過疎化し、今では地名すら残ってない。そんな地域だったそうです。

村の外れには大きな池があり、村の人間は子供の頃から「あの池には神様がいる」と教えられて育ちます。

その神様は村の守り神であり、村人以外は近づいてはならない。
神様は女性で、女が近づくと機嫌を損ねる。
だから、池に近づくことができるのも、神様の名前を知ることができるのも、呼ぶことができるのも、すべて村の男だけ。

故に村では、神様に近づくことの出来る男を立て、女たちは、その男達の世話をする事で信仰を示していたんです。

村では年に二回、春と秋に神様を讃える祭りが開催され、その日になると男達は村の全てを女に任せて、1日中池の周りで祭事を執り行います。

普段の祭りは、神様に感謝を捧げ、讃えるもの。
しかし、春の祭りで「お告げ」が下ると、秋の祭りで「お告げで選ばれた男」が池の神様に捧げられる、つまり「生贄」の儀式も兼ねていました。

この祭事には、男には知らされない、代々女だけに口伝で伝えられている話があります。

池を囲む森の手前、女性でも立ち入る事が許された場所にある小さな社。その社の管理は女の仕事でしたが、実は神様は普段はそこに居るのだと。
神様は女を嫌っているわけではなく、寧ろ友好的で、伴侶を求めているのだと。
池は神様にとって「寝所」にあたり、故に男以外が近づく事を嫌うのだと。
そして、池の神様に捧げられる。つまり、伴侶として選ばれる男は、村の中で「役立たず」と見なされた者だけである、と。

働かず、家ではふんぞり返り、飲み食いするだけ。借金を作る、暴力をふるう、家族を苦しめる男。

村の女たちは毎年、男が居なくなる祭の日に集まり、排除すべき「役立たず」つまり「生贄」が居るのかを話し合います。
排除すると決めた者の名を、紙に書いて社に奉納する。すると、神様がその男を自らの伴侶に選び、「間引いて」くれる。

この村で女が使う「男尊女卑」の言葉は、本来の意味でありません。
男の価値は「生贄に選ばれない事」であり、家庭を、つまり女を大切にしてくれる人にこそあります。
「男は神に近づける、だから自分は偉いんだ」と思い込んでいる男性を陰で、「女が男の命を握ってるのに」と、馬鹿にする。そんな言葉として使われていたそうです。

祖母は、そんな村で生まれました。
でも、物心つく頃には、過疎化した村で暮らす事が難しく、祖母一家は村の外に引っ越したそうです。

私がこの話を聞いたのは、会社の上司の愚痴を祖母にこぼした時でした。

その上司は、典型的な男尊女卑の考えを持つ人でした。
「女は男を立てるべき」
「男に従うのが当然」

そんなことを平然と言う人で、私はうんざりしていたんです。
すると祖母は笑って、こう言いました。

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