秋山さとるの家に今年もあのハガキが送られてきた。
それは彼の父宛のハガキ。
毎年夏になると送られてくるそのハガキは、
表側には、
秋山守様という宛名に
S小学校6年3組同草会のご案内
と角張ったくせのある字で書かれている。
━また字を間違えてる、、、
秋山さとるはハガキの表側を見ながらボソリと呟いた。
同窓会の「窓」が毎回「草」になっているのだ。
裏側には開催日時と場所が記載され皆様のご参加心からお待ちしておりますと、恭しく書き添えられている。
送り主の住所と氏名はない。
さとるは思う。
━主催者の人は父がとっくの昔に鬼籍に入っていることを知らないのだろうか?
彼の父はもうすでに30年以上も前に他界していた。
当時さとるの父である秋山守は下町で小さな印刷所を経営していたが、さとるが3歳になるくらいに工場の片隅で首を吊って亡くなった。
まだ40歳のことだった。
商売は順調で特に借金もなく家族内でも特に問題がなかったから周囲の者たちは皆、首をかしげていたという。
その頃さとるの妹はまだ母親のお腹の中にいた。
そしてさとるも今年で40。
現在は父から継いだ印刷所をやりながら、年老いた母と二人下町の一軒家で暮らしている。
そこは彼の父が工場の裏側に建てた小さな平屋建てだ。
妹は近くのアパートで一人暮らしをしていた。
女手一つで印刷所を経営しながらさとるとその妹を育ててくれた母も今年で75だ。
もうずいぶん体も弱ってきていた。
その日晩御飯の時に彼は例のハガキを母に見せたが、ただ焦点の合わない目でボンヤリ眺めるだけだった。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。