私は自動車整備士になりたくて専門学校へ行き、卒業後無事就職先も決まった。
就職後、数年が経ち、仕事にも慣れた。
ある休日、友人達とドライブに出かけることになり、友人の車に乗り合わせ出かけた。
目的地は山の麓にある温泉。
日頃の疲れを取ろうということになり日帰り温泉を楽しむことに。
車で約1時間ほどかけ目的地近くまで来た。温泉施設の近くにはダムがあり、ダムを眺めながら温泉施設を目指した。
無事に到着し、ゆっくり温泉に浸かりまったりとした時間を楽しんだ。
それからというもの、休日ともなれば1人で温泉に入りに行くことがマイブームとなり、1人で出かけることが多くなった。
ある休日、この日も温泉に出かけた。
施設が近づき、ダムの横を通りかかった時1台の車が路肩に停車してるのが目に入った。
しかし、そのまま通り過ぎて温泉施設に向かった。
1時間ほどして帰宅しようと施設を出ると、ダムの横でまだ先程見た車が停車していた。
ハザードを出して、車内には女性が1人乗っているのが見えた。
停車している車の後ろに自分の車を停車し、運転席にいる女性に声をかけた。
「すみません。車、故障でもされました?」
静かにこちらに顔を向け、何も言わず、小さく頷いた。
「そうでしたか、どなたか呼ばれました?」と尋ねると首を横に振った。
この時点で、少し不審に思った。
何故、車が動かなくなったのに誰も呼ばないでこの先どうしようとしていたのか。と。
「私、整備士なので、少し見てみますか?」と尋ねるとコクリと小さく頷いた。
ボンネットを開けるために、運転席のドアを開け、ボンネットを開けるレバーを引いた。
ドアを開けた瞬間、少しヒンヤリとした空気を感じた。
ボンネットを開け、いろいろ調べて応急処置をし、ボンネットを閉めると運転席に座る女性がこちらをずっと見ていた。それを見て、一瞬、寒気が全身を襲った。
「すいません。エンジンかけてみますね。」
エンジンは無事にかかり私は少しホッとした。
女性はただ座って、前方を見たまま。
少しばかり、気味が悪くなり、
「では、私はこれで。応急処置なので、ちゃんとしたとこに1度見せて下さい。それでは、気をつけて。」と言い残し、そそくさとその場から立ち去った。
なんか、変な人に声かけてしまったな…と思いながら帰路についた。
しばらくしたある日、職場でお客さんから変な噂話を聞いた。
どうやら、私が通っている温泉施設の近くのダムで女性の霊が出るというのだ。
そのような噂話を聞いたことがなかったので私は驚いた。
事故なのか、事件なのかわからないがダムで女性が亡くなったとのこと。
その話を聞いてからは少し、温泉施設に行くのをやめていた。
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