俺は市内にある某救急病院に入院している。
体の数ヶ所を骨折し内臓も一部傷つき、トイレさえも一人でいけないくらいの病状だ。
友人は幸運にも軽症で済んだのだが精神に異常をきたしているということで、精神科の病院に入院している。
いったいどうしてこんなことになったのか?
俺は病室の白い天井を睨みながら一週間前のことを思い返した。
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それは夏の日曜日、昼下がりのことだった。
この日は例年になく大きな台風が接近していたが、その頃はまだ嵐の前の静けさ宜しく空はカラリと晴天だった。
俺はというと部屋で大学の友人の椛島とダラダラ時間を潰していた。
すると唐突に椛島が「なあ、面白いとこに連れていってやろうか?」
と言って意味深に笑う。
あまりに暇でぼおっとしてたから「なになに?」と食いつくと、
「じゃあ俺の車で行くか」と言い立ち上がり、さっきと玄関口へと歩いた。
それからアパートの入口を出て駐車場に停めた自分の車に乗り込むと、さっさとエンジンをかける。
俺も慌てて助手席に座った。
道中何度となく「なあ、そこってどんなところなんだよ?」と尋ねたが、椛島はただ薄笑いを浮かべながらハンドルを操作するだけだ。
しょうがないから俺はウインドウの向こうを後方に流れる景色をぼんやり眺めていた。
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車はどんどん北へ北へと走り進み、半時間ほどで前方に山裾が迫ってくる。
どうやら市北部に連なる山の一つに向かっているようだ。
それから間もなくして車は、右手にガードレール左手に山林の広がる片側一車線の山道を走り出す。
何度目かのカーブを過ぎた辺りで突然椛島は左にハンドルを切り、両脇に木々の迫る山道に分けいった。
「おいおい、いったいどこ行くんだよ?」
俺は少し不安になり椛島の横顔に言うが、やはり彼はただフロントガラスを見ているだけだ。
いつの間にか空には鉛色の雲が立ち込めていて、生暖かい雨がポツリポツリと降り始めている。
しばらくすると、前方に忽然と古びたトンネルの入口が見えてきた。
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