子供を泣き止ませろ
投稿者:とくのしん (65)
話を終えた里美に運転手が口を開いた。
「お客さん・・・その女性、最後に何かゆうてはりました・・・?」
「いえ、ただ子供さんを抱きかかえようと必死だった姿しか・・・」
「・・・その母親っちゅうの、多分ワシの娘ですわ・・・」
その言葉に里美は言葉を失った。
「あのバス事故で亡くなったんは5人。バスの運転手と事故の原因の高齢者、それとワシの娘と孫ともう一人の乗客や・・・」
「・・・・・・」
「お客さんと同じでな、あんときは入院していた母親の見舞いに来てくれた帰りやったんやけど、その帰りに事故に遭ってしもうてな・・・。ほんで原因聞いたら孫が泣いたのを老人が激昂して怒鳴り散らしたゆうやないですか・・・。なんで赤ん坊が泣いたくらいで、なんでそないなことになるんかいな・・・って何度も思いましたわ」
ハンドルを握り前を見据える運転手の声が僅かに震えていた。
「まだ1歳にもなっておらんのに・・・これじゃ死ぬために生まれてきたようなもんやないですか。娘だってやっと・・・やっと苦労してできた子なのに・・・」
里美は陽人の寝顔を見ながら運転手の慟哭を黙って聞いていた。そして口を開いた。
「なんて言葉をかけていいか・・・でも運転手さん。私が見た娘さんは、あんなに必死に子供を取り戻そうとする娘さんは本当に立派なお母さんだったと思います。そんなお母さんでお孫さんも幸せだったと思います・・・」
その言葉を聞いた運転手はしばらく黙ったあと
「・・・そやな、最期を見届けてくれたお客さんが言うなら間違いない。娘は立派やった・・・」
運転手の頬を一粒の涙が伝っていた。
「そんなことがあったんだ」
次の見舞いのときに、里美はあの日の出来事を話した。
「亡くなった娘さんというのが、自分と同じような境遇の里美に何か伝えたかったのかもしれないね」
「うん、私もそう思う。だからね・・・」
見舞いを終えた里美は病院近くの花屋に立ち寄った。
「だからね・・・私、今日帰りにお花を供えてこようと思うの」
亡くなった娘さんの冥福を祈りたいという気持ちから、現場に立ち寄ろうと決めていた。
事故現場に差し掛かった里美は車を停める。後部座席にはチャイルドシートで気持ちよさそうに陽人が眠っていた。
「ママ、ちょっと行ってくるね」
そう声をかけて一人車を降りた。事故現場には花が供えてあった。まだ比較的新しい、もしかするとあの運転手さんが供えたものかもしれないと思いながら、自身も買ってきたばかりの花を供えた。
里美はそっと手を合わせて冥福を祈った。目を開けると、近くに2体の地蔵があることに気づいた。大きな地蔵の下に小さな地蔵が寄りっている。それはまるで親子地蔵であった。
(きっとあの親子の供養のためのお地蔵さんなのかも)
その地蔵の前で里美は再び手を合わせた。
・・・・・か・・し・・・・て・・・
ふと声がした気がした。
この母親は、亡くなった母子に同情してはいけなかった??((( ;゚Д゚)))
変に同情すると頼られるって言いますからね。
情けは人の為ならず……か?
全ては老害のクソジジイのせいだ!
亡くなった女性は自分の赤ちゃんと一緒じゃないのか
理不尽すぎる