本当にあった話なので話のインパクトは他と比べて低いかもしれません。
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これは、俺が二十代の頃に実際に体験した話です。
当時、仕事の都合で都内から少し離れた山沿いの町に引っ越しました。
住んだのは、築年数のかなり古い二階建ての木造アパート。
俺の部屋は二階の一番奥で、廊下は細く、夜になると電灯が一つしか点かず、昼間でも薄暗いような場所でした。
住み始めて一週間ほど経った頃です。
毎晩、決まって深夜二時頃になると、足音が聞こえるようになりました。
コツ……
コツ……
コツ……
裸足で板張りの廊下を歩くような、湿った音。
最初は「誰か帰ってきたのかな」と気にしていませんでした。
ところが、その足音は必ず――俺の部屋の前で止まるんです。
ピタッ、と。
それ以上近づいてくるわけでもなく、ドアを叩くこともない。
ただ、そこに誰かが立っている気配だけが、異様なほどはっきり伝わってくる。
それが三日続きました。
四日目の夜、さすがにおかしいと思い、
足音が止まった瞬間、俺はそっとドアスコープを覗いたんです。
……廊下には、誰もいない。
いや、正確には――
人の姿はないのに、床にだけ影が落ちていた。
誰かが俺のドアの真正面に立っているかのような、
不自然に長く、歪んだ影。
天井の照明の位置を考えても、
どう考えても影ができるはずがない。
次の瞬間でした。
ドアのすぐ向こうから、
「……いるよね?」
と、女の声が聞こえたんです。

























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