これは、私が高校生の頃の話です。
当時、私は電車で通学をしていました。私の住んでいるところは田舎で、JRから地元のローカル線に乗り換える必要があります。
この路線が中々に曲者で、改札のない無人駅がいくつも続くんです。
その日は、文化祭の準備で帰路に着いたのがかなり遅かったのを覚えています。
連日の疲れもあり、乗客が少ないのをいいことに、私は電車の中で恥ずかしげもなく大口を開けて爆睡していました。
電車が駅に着いた、その瞬間です。
――口の中に、何かが入った。
咄嗟に目を開けると、見知らぬ中年の女性がこちらに背を向けて電車から降りていくところでした。
追いかけようかとも思いましたが、無人駅で夜。返り討ちにされる可能性が頭をよぎり、私は動けませんでした。
口の中に何を入れられたのか…。
確認してみると、ざらざらした砂糖にふわふわした感触。鈴カステラでした。
意味がわからない。
鈴カステラの妖精?ただ、あちらも相当おかしいと思いますが、私も中々おかしくて。ティッシュを持ち合わせていなかったので、そのまま鈴カステラを食べてしまいました、今考えたら絶対吐き出すべきだったと思います。
幸い、何の変哲もない鈴カステラで、口の中がぱさぱさになっただけでした。
翌日、この話を学校で面白おかしく友達に話しました。鈴カステラ布教妖精じゃん!なんて笑い話にして。
でも、友達は全然笑ってくれなくて、深刻そうな顔つきをしていました。
それで一言――
「それ、窒息狙いだったんじゃない?」























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