これは、小学校高学年くらいの頃の話だ。
ある日の昼下がりの授業中、つまんない歴史の授業をぼんやり聞きながら、窓際の席に座ってた私はボーッと窓から校庭を眺めていた。
たまたま体育の授業が無いのか、誰もいない、ガランとした校庭……のはずだった。
校庭のど真ん中、誰かがいる。大人だ。
でも先生じゃない、掃除のおじさんでもない。見たことのない人だった。
遠目にもガッチリした体つきがわかった。男の人だろう。俯いて直立している。微動だにしない。
やけに不気味なその人に、私の視線は釘付けになっていた。
誰なんだろう……なんてぼんやり考えてると、その人はこちらの視線に気がついたようだった。
バッチリ目が合ってしまった。この距離では顔まではよく見えない。でも、確かに目が合った気がした。
すると、その瞬間からその人は、しきりにこっちに向かって手を振ってきた。
声は聞こえないけど、まるで、おーい、おーいって言うみたいに、両手を大きく振ってきた。
その動きが、とにかく”変”だった。気が狂ったように、不自然な動きで全力で両手を振っていたんだ。
完全に見てはいけないものを見てしまったと思った。
背筋が凍りつき、眠気など吹き飛んでいた。
すぐに目を逸らして、教卓の方を見る。
今見たものは気のせいだ。きっと、夢を見ていたんだ。そう思い込んだ。
それでもやはり気になってしまう。
ドキドキしながらもう一度校庭の方を見る。
…………居なかった。
やっぱり気のせいだ。
ホッとして、またぼーっとし始める。
_____その時だった。
♪ ピーンポーンパーンポーン
『1階、下駄箱の鍵が無くなりました。佐藤先生至急来てください。』
校内放送だ。この放送は何度も避難訓練の時聞いた。
不審者が学校に侵入したことを知らせる放送だ。
うちの学校では、不審者に気づかせないように、
このように暗号にして、侵入場所を知らせるようにしている。
怖い
スクスク