奇々怪々 お知らせ

不思議体験

とくのしんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

今、日本が抱える社会問題が端を発した恐怖体験
長編 2025/02/02 00:33 96view

この話は、少しセンシティブな内容を含みます。
九州某県に在住の沢田さん(55歳)が昨年末に体験した話を紹介します。

年末年始の休みを満喫していた沢田さんのもとに一本の電話が入りました。電話の相手は久間さん。沢田さんの従兄にあたる方からでした。夜釣りに行かないか?というお誘いでして、お二人は釣りが共通の趣味です。沢田さんが小学生の頃、5つ年上の久間さんから直々に釣りを教えてもらったことがきっかけで、お互い時間が合えばどこにでも釣りに行く仲だとか。

「12月はアジやメバル、アオリイカあたりも狙えるんですよ」
沢田さんはその誘いに二つ返事で了承し、善は急げとその日の夜中に釣りに行くことになりました。久間さんが愛車のパジェロで約束の時間きっかりに迎えにやってきて、そのまま最寄りのスマートICチェンジから高速に乗り目的地まで向かいました。

目的地までは概ね1時間程で到着。とある漁港近くの釣り場です。車から荷物を降ろし、堤防へ向かいました。年末年始ということもあってか、夜釣りの客は数える程しかおりませんでした。普段であれば、人気スポットのためか場所取りも苦労することもあるだけに、貸切に近い状態に心弾ませたそうです。

そうして始めた夜釣りですが、全くアタリがありません。近くにいた別の釣り客数人に訊いてみたところ、同じように今日はさっぱりだという答えが返ってくるばかり。1時間・・・2時間・・・と刻一刻と時間は過ぎていくのに、アタリすらない様子に諦めたのか久間さんが帰ろうかと言い出しました。

廻りを見ればポツンポツンといた釣り客は一人としておらず、気がつけば二人になっていました。どうやら皆帰ってしまったそうで、そんな様子にますます釣りをする気が失せたという二人も帰路に着くことにしました。荷物を車に詰め込んだところで、久間さんが口を開きました。

「帰り、運転頼んでもよかと?」

久間さんは持ってきたワンカップを助手席に乗り込むなり開けると豪快に飲み干しました。飲むのはいいけど、久間さんを自宅まで送り届けると自分の足が無くなることを心配する沢田さんに「今日は帰ってとことん飲むとよ」と言う。釣りで溜まった鬱憤を酒で晴らすのも悪くないと思い車を走らせました。

来た道を辿りながら高速に乗り、無事自宅の最寄りのスマートICチェンジで降りようとしたときに事件は起きました。車をゲートに寄せたのですが、バーが開きません。ゲート横の電光掲示板は“ETCカードを確認できません”という表示が繰り返し点滅していました。通信障害かと思い、沢田さんはETCカードを抜き差ししました。しかし一向にバーが開く気配がありません。
電光掲示板では“インターホンで係員にお知らせください”と表示も点灯していたため、久間さんは飲みかけのワンカップをドリンクホルダーに入れると「俺が行くと」と言い車を降りました。そうしてインターホン近くまで行ったときのことです。

「車のヘッドライトの光の向こうに、何か動くものを見たんです」
沢田さんは何かの存在に気づきました。目を凝らしてみると、作業服のようなズボンを履いた男性と思われる身体の一部分が見えたのです。

「こんなに早く係員が来てくれるのか」
そう沢田さんは思いました。少し安堵したところで久間さんに視線を向けると、彼は寒そうに腕組みしながら、インターホンからの案内を待っているようでした。係員とやり取りをしている様子ではないことから、それでは先程視界に映った人影は一体何者だろうと違和感が芽生えました。久間さんに向けていた視線を再度“何者か”に移すと、車にゆっくりと・・・真っすぐ向かっていることがわかりました。さらにその奥にもう一人の人影があることにも気づいたときでした。

「剛兄!早く車戻れ!」
窓を開けて大声で久間さんに呼びかけました。その声にびくっと大きく飛び上がった久間さんは何事かと辺りを見回そうとしましたが、沢田さんは「いいから早く!」と必死に呼び戻そうと声を張り上げました。

「最初はね、酔っぱらいかとも思ったんです」
千鳥足にようにふらつきながらこちらに向かってくる人影の動きに、沢田さんはこれは係の人間ではないかもしれないと思いました。ただの酔っぱらいかと思っていたが、どうもおかしい。
ライトの光に照らされた人影の全貌が徐々に明らかになっていくと、その異様さにようやく気づきました。

着ている服は泥に塗れていた。そしてその人物はどう見ても生きているの人間には見えなかった。
そう、一言でいい表すならば…それは”ゾンビ”
正に映画に出てくるような化け物が目の前にいたのです。

久間さんが車に乗り込むと同時に先頭にいた“ゾンビ”が車に飛びかかってきました。先程まで足を引きずるようにゆっくりとした動きだったはずなのに、人間離れした動きで迫ってきたのです。

二人は悲鳴を上げました。あまりに悍ましくあまりに恐ろしい姿に驚愕したこともあり、アクセルを思い切り踏んでいました。急発進した車はゲートをこじ開け、ボンネットに乗り上げたゾンビを勢いよく振り落としました。しかし、もう一体のゾンビが目の前に立ち塞がりました。急なことでしたので避けることも止まることもできず、沢田さんはそいつを思い切り撥ねてしまいました。ドン!ともグシャ!とも響く鈍い音と衝撃をステアリング越しに感じながら、それでも恐怖からアクセルを緩めることはしませんでした。フロントガラスに衝突したこともあり、大きくひび割れておりました。それを見て“もしかしてあれは人だったかも”と突如ふと冷静に立ち返り、人を轢いてしまったかもしれないという恐怖を覚えました。

しかし、あの場所へ戻ろうなんて気持ちには到底なれません。とにかく一刻も早く落ち着きたいと、震える手でステアリングを持ち、震える膝を堪えながらアクセルを踏み続けました。

そうしてようやく久間さんの自宅につき、あれは一体なんだったのだろうか?と話をしましたが答えはは出ません。ひとまず車を確認するとフロントバンパーとボンネットが大きくヘコみ、フロントガラスには大きなヒビが入っていました。ところどころ赤黒い血液のようなものが付着しており、嗅いだことのないような異臭がしたといいます。

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コメント(1)
  • みなさんお久しぶりです。2カ月ぶりに投稿させていただきました。宜しくお願い致します。

    とくのしん

    2025/02/02/00:37

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