秘密基地の笑い声
投稿者:with (43)
俺が入ってきてから戸締りはしていないので開きっぱなしだ。
アレがやってきた時もそのまま立ち去っている。
俺は息を呑んだ。
今ここで走って小屋を飛び出すべきか、一度カーテンを開けて外の様子を確認するべきか、究極の二択を迫られている気分で吐き気がした。
前者はアレと出会って捕まってしまう悪い予感しかしないが、後者も窓を叩いたのがアレかもしれないと考えるだけで心臓が破裂しそうだった。
俺は意を決して小屋から飛び出して逃げる事にした。
ガサ、ガサ。
だが、いざ走り出そうとした刹那、ドア付近からまたもや足音が聞こえた。
マジで勘弁してくれと、涙目になり俺は諦めるように壁に寄り掛かった。
しかし、俺は今なら窓から逃げられるのではと奇策を思いつく。
小屋の窓は上下のスライド式で年季が嵩んで随分と固いものの、俺一人分なら何とか脱出できるほどには大きい窓だ。
勇気を振り絞ってゆっくりとカーテンを開けて外を確かめるとやはりこっち側には誰もない。
今、アレはドア側に移動してるので脱出するなら今がチャンスだと思った。
ドアのほうから足音が聞こえることを確認して、俺はカーテンを除け思いっきり窓を開けて縁に片足を乗せて身を乗り出す。
「よし、早く……!」
早く飛び出して山を駆け下りようと思ったところだった。
窓から上半身を出した俺は、ふと窓の下を見てしまった。
そこには真っ青な顔色をした男の子が口を大きく開けたまま、地面に仰向けで寝そべり俺を見上げていた。
「あああ、ああああああ⁉」
俺は顎が外れそうなほど叫びながら小屋の中に横転した。
体中を小物にぶつけながら起き上がり、プリントをくしゃくしゃに握りしめたままドアから飛び出した。
すると背後から、
「ぎゃははははは」
という例の子供のような狂った笑い声が聞こえた。
俺は山を一気に駆け下りた。
下り坂なので何度も足がもつれて転びそうになるが、正直転んで滑ってもいいのでどうにかして少しでも早く山を下りたかった。
麓までくると笑い声は聞こえなかったが、自転車に跨り家まで全力疾走で飛ばした。
家に帰ったら帰ったで母親が怪訝そうに「どしたん、あんた」と聞いてきたが、俺はそれに構わずに部屋に逃げ込んで、布団にもぐった。
「マジありえんやろ…、なんやアレ」
しばらく布団の中で震えているとまたライン通知がきたらしく、ポケットに入れていたスマホが鳴る。
こえーよ・・・
怖かった
なんでBと共有しないんだよ.. 余計怖いじゃん…