秘密基地の笑い声
投稿者:with (43)
月が陰っていてほとんど真っ暗な山は本当に怖くて本気で漏らしそうになるが、プリントの為にわざとらしい独り言をこぼしながらも何とか小屋に辿りつく。
鍵はかかってないので風化した木製のドアを押し開けて、スマホのライトで中を照らす。
今にも折れそうな椅子とか使用途中の何かの部品や工具を置いたままの棚、物置状態の長机と目のつく場所を見渡してみるが白い紙切れは見当たらなかった。
「おっかしいな、絶対忘れたおもたんやけど…」
なんて首を傾げていると、俺の背後、ドアを抜けた外の方からガサっと足音が聞こえた。
俺はビクッと体を跳ね上げた後、反射的にライトを切って息を潜めた。
もしかしたら小屋の持ち主かもしれないが、俺は嫌な気配を感じたからとにかくどうにかして見つからずにやり過ごす方向に意識を持っていかれた。
ガサ、ガサ、と完全に人の足音だとわかると恐怖心が少し和らいだが、それが確実に小屋に向かっていることは明白で、俺は物陰に隠れることにした。
べた、べた、と小屋に踏み入れたのか、足音が変わったのがわかった。
靴音ではない裸足で床を歩くような音。そして、不自然にも懐中電灯を持っていないのか依然小屋の中は暗いまま。
それが俺に一抹の不安を抱かせた。
なぜ裸足なのか、なぜこんな時間に山へやってきたのか、なぜライトを使わないのか、この時の俺には相手の目的がわからなくてとにかくかなり動揺していたと思う。
すると、
「あ…はは……はっ」
と突然、振り絞った声が漏れたように乾いた笑いが聞こえた。
「ははは、あっはははは、ぎゃは」
声の主は間違いなく小屋にやってきた何者かで、子供のように高く弾むように無邪気な笑い声に変化していき、
「あはははははははははははは」
一人でひっきりなしに笑い続けた。
あまりの意味不明さに俺は心臓が爆発しそうなほど物陰で震えていた。
第六感がアレは人間じゃない、人間だとしても異常者だと告げている。
笑いつかれたのか数分で静かになり、再びべたべたと足音が聞こえ、それがガサガサと変わったのを確認し、アレが立ち去ったと思い思い切り息を吐いた。
本当に怖かったと同時に心底安堵してるとスマホに通知が来た。
Bからのメッセージだったが今はそれどころじゃないので、そのまま明かりで室内を見渡し、目的を果たす。
プリントは長机から落ちたのか、物置台の下に滑り込むようにして頭を出していた。
俺は無事にプリントを入手する。
コンコン
その時、窓を叩く音が聞こえた。
驚いて振り返るがカーテンが締まってるので当然外は見えない。
俺はドアに視線を流す。
こえーよ・・・
怖かった
なんでBと共有しないんだよ.. 余計怖いじゃん…