地中に埋められたのは
投稿者:with (43)
俺が高校生の頃のちょっとした不思議体験。
実家がある町は山を切り開いたところにあって、俺の実家は山を登った所の一番奥、周囲が山林に囲まれた中腹くらいのところに建ってる。
だから俺の実家より奥には家が無い。
そのせいで小中と登校は大変だったが、高校生にもなるとある程度慣れもあって苦に思わなくなってた。
俺の家の下には、数十メートル間隔でポツンと家が建ってるんだけど、やっぱり俺の家が一番上にあるからそれ以上続く道路を登ろうとする奴なんて滅多に居ない。
居るとすれば、散歩やジョギングが日課の顔見知りの地元の人くらいで、車が通るなんて事は年に数回あるかないかだった。
その数回の出来事も、大体は営業とかで土地勘のない奴が俺ん家より上に家があると思って進むだけで、俺ん家より上に延々と山道しかない事が分かればすぐにUターンしてくるのがお決まりだ。
そんなある日の深夜。
ポツポツと雨が降っていた日のこと。
寝ていると車のエンジン音が聞こえて目が覚めてしまった。
時計を見れば深夜の二時を回ったところで、こんな夜中に車が通る事なんて経験上なかったから、すぐに目が覚めて二階の自室の窓から外を覗き込んだ。
すると、車のヘッドライトが明るくてすぐに車が山を登ってることが分かった。
土地勘が無いのか、かなり慎重に進んでる風だったが、俺の家の前を通り過ぎると山奥へと溶け込んでいった。
もしかしてこの上に何もないと知らない奴が上がっていったのかな、なんて思って、俺は上着を着て外へ様子を見に行くことにした。
サンダルに履き替えて外に出ると、傘を持って車の後を追うように山道を登る。
この山道は結構深くまで続いているが、途中で舗装は終わっている。
その為、車だと絶対に途中で引き返すことになる。
どうせ舗装が途切れたあたりで立ち往生してUターンしてくるだろうと思いながら追いかけてたんだけど、案の定、車はそこで停まってた。
でも、中は無人でどうやら乗り捨てられたみたいだった。
その辺りで俺も引き返せばよかったんだけど、ちょっと怖くなりながらも舗装が途切れた先、手入れのされていないただの山道を進んだ。
ここまで俺の足で十分もしない距離だったが、車なら数分で到着しているだろうと考え、そうなると車の持ち主は結構奥深くまで既に入り込んでいるのかもしれない。
山道に突入して更に十分くらい経った時、山林の奥の方で人工的な光が煌煌としているのが見えた。
咄嗟に傘に落ちる雨音で俺の存在が気付かれるとヤバいと思い、雨が降る中、傘を閉じた。
それで、木の陰に潜むようにしてその光の辺りまで忍び寄ってみると、大人三人くらいがスコップで地面を掘り返してた。
一瞬、埋蔵金でも探してんのかなと思ったんだけど、なんかその傍らにビニールシートみたいなのに包まれた荷物みたいのがあって、掘り返した穴の中に雑に放り込んでた。
荷物が『ドシャッ』と音を立てて穴に落ちると、なんか「んああああ!」みたいな声が上がって、俺は思わずビクって肩が跳ねた。
(え、ヤバくね)
もしかしなくても、これって犯罪の現場を目撃してしまったのではと思った。
でも、そいつらが穴を埋めていく作業を淡々としてて、どうにも現実味が無かった。
と言うか、怖くて身が竦んでじっと気配を消して黙って見ていることしか出来なかった。
結局何だったんでしょうね