実家での不思議な出来事をふと思い出した。
私が小学4年生か5年生の頃、引越しをすることになった。引越し先は歩いて行ける隣町。
業者は使わずに家族だけで作業を行なった。
小さなものはすでに運び終えて、あとは大きな家具類を運ぶだけ。叔父に頼んで軽トラを借りてもらい、どんどん運び出していく。
キッチンの食器棚を動かしたとき、その裏から一冊の絵本が出てきた。
パステルブルーとパステルピンクがやさしく混ざる正方形の表紙。
いかにも子供向けなキリンの絵。
題名は思い出せないが、ひらがなで書かれていた気がする。
ただその絵本、私の物ではない。
叔父や親も知らないという。
一人っ子だから兄弟のものでもない。
結局誰のものかわからないし捨ててしまった。
あれは誰のものだったのだろう。
「…あんた、この部屋に、ずっといたよね?」
母がよく聞いてきた。
あの家では、子どものような人影をよく見かける。
大人たちがそう話していたのを——思い出した。
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