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不思議体験

たちさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

誘い
短編 2025/04/09 23:09 2,882view
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季節は冬が近づいてきた頃。
何故か妙にあの温泉に入りたいという衝動にかられた。
まだ昼間ということもあり安心していた私は久々に行くことにした。
故障していた車を見た日以来か…と思いながらダムの近くを通りかかった。その時、どこからともなく視線を感じた。
もちろん、車内には1人。周りを見渡しても人はいない。
気のせいか…と思い、温泉に向かった。

1時間後、久々の温泉を堪能し施設をあとにした。
今思うと何故、そこに行ったのかわからない。
施設を出た私は、ダムを見てから帰ろうと思った。車を駐車場に停め、ダムの上を歩いて、そこからの風景を眺めていると、ふと、また視線を感じた。
もちろん周りには誰もいない。
ダムの水を上から覗き込んでみた。

私のいる場所から数十メートル下に水面が見える。
そこをボーッと見下ろしていると、水中の中に女性の顔らしきものがこちらをずっと見ているのが見えた。
驚いた私は、急いで車に戻り、帰宅した。

数週間後。
温泉に行っていなかった私は急にダムに行こうと思い車を走らせた。
温泉ではなく、ダムに行きたいと強く思った。
自宅を出る時に、友人から着信があったがすぐに出かけたかったので電話に出なかった。
ダムに到着し、水中を眺めた場所まで行き、水中を覗き込んだ。
じーっと眺めていると女性の顔らしきものが水中に見えた。
その直後、なぜか目を閉じた。
すると、水中の中からダムを覗き込んでいる私の姿が脳裏に浮かんできた。

これは…あの女性の目線か?と思いながら自分自身の姿を見ている。
すると、ダムの上の通路から身を乗り出している姿が見えてきた。
今にも落ちそうな時、何者かに後ろから引っ張られた。それと同時に我に返り呆然としていた。
「おい!なにやってんだ!」
「あぶねーだろう!」
聞き慣れた声。
友人達の声だった。
車に戻り、徐々に落ち着いてきたので話を聞くと、自宅を出る時にかかってきた電話は温泉に行かないかという誘いの電話だった。
電話に出なかったので、仕方なく自分達だけで行こうとなり向かっているとダムの駐車場に車が停まっているのを見つけたと言う。
私はこれまでのことを話し、
「本当にありがとうな」と友人達に伝えた。
それ以来、温泉施設には行っていない。
数年後、施設は潰れてしまい、ダムのある場所には全く行く機会がなくなった。

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