子供を泣き止ませろ
投稿者:とくのしん (65)
看護婦の言葉に時計を見る二人。気が付けば20時近くになっていた。
「こんな時間か。悪かったな、気をつけて帰れよ」
「うん」
「しばらく入院になるけど、陽人のことよろしくお願いします」
「子供の事は心配しないで。それより自分のことを心配してね」
孝太郎と会話をしながら、おむつとミルクを済ませて病室を後にした。
バス停にベビーカーを押しながら向かうとベンチに腰をかけて待つ人が数人。時刻表を見るとあと20分程度で到着するようだ。その程度であればタクシーを使わなくてもいいかと、里美はベンチに座りバスを待つことにした。陽人に目をやるとベビーカーのなかでスヤスヤと眠りについている。その愛くるしい寝顔を見て過ごしているとバスが到着した。
バスに乗り込む人々の最後尾に並び、ベビーカーを畳んだあと運転席のすぐ後ろの席に陽人を抱いて座った。相変わらず心地よさそうに寝ている我が子の寝顔を見ていると、まもなくバスが発車した。
揺れるバスの中は喋る者もおらず、里美も窓から見える景色を眺めていた。景色といっても暗い夜道である。ところどころに点在する街灯の灯りをただ眺めているようなものだ。丘の上にある病院の帰り道は暗い山道をただひたすらに下っていく。揺れる車内の心地よさに加え、夫の無事を確認できた安堵感と腕に抱く我が子の温もりからか里美は睡魔に襲われた。疲労感も相まって里美はついに瞼を閉じた。
バスに揺られ薄れゆく意識の中、ふと何かが聞こえてくる。
夢か幻か、うっすらと残る意識に誰かが語り掛けてきた。
・・・し・・・て。・・・こ・・・を・・・か・・・
里美は朦朧とする意識のなか、その声に問いかけた。
(誰?何を言っているの?)
・・・そ・・・・・・・・こ・・・・・・・・・て・・・・・・・い・・・・
何を言っているかわからない。だが、次第にその声が近付いてくる。
・・・と次の瞬間、肩を誰かに掴まれた里美は唐突に意識を引き戻された。
「おい!その子供を泣き止ませろ!」
振り返った先に鬼の形相の老人が立っていた。状況が理解できない里美は咄嗟に老人に謝罪した。
「あ!は、はい!すみません!」
慌てふためいていたものの、抱きかかえる我が子の泣き声を聞いてようやく事態を飲み込めた。
「ごめんね、ママ寝ちゃって・・・」
あやしてもあやしても陽人は泣き止まない。それどころか愚図りの勢いは増していく一方である。
「早くしろ!うるさくてかなわん!」
老人の急かす声に里美は焦りを募らせた。
「はるちゃん、いい子だから・・・ね?いい子だから泣かないで・・・」
この母親は、亡くなった母子に同情してはいけなかった??((( ;゚Д゚)))
変に同情すると頼られるって言いますからね。
情けは人の為ならず……か?
全ては老害のクソジジイのせいだ!
亡くなった女性は自分の赤ちゃんと一緒じゃないのか
理不尽すぎる
理不尽すぎワロタ