狩の真実
投稿者:kana (210)
リーダーが指示しなくても3人の勢子(せこ)がビーグル犬を8頭連れて狩り宿を一足先に出る。
銃はボルトアクションのライフル銃だ。
弾は30-06。自動銃より軽いのが理由だ。
予備弾倉は持たない。5発あれば充分だ。
水も弁当も余分な物は一切持たない。
わずかにチョコレートを2枚持つだけの軽装でイノシシを追う。
彼らは犬よりも速い。
ビーグル犬は獲物の通ったとおり臭いを追っていく。
勢子はイノシシの習性を良く知っているから、先回りして待ち伏せる。
勢子の方が獲物と出会う確立が高いのはこのためだ。
私と5人のタツミ役は30分程遅れて狩り宿を出る。
タツミとは、勢子が追い込んだイノシシを獣道で待ち伏せしてしている役だ。
これが思いの外つらい。氷点下10度以下のボラの陰で、
来るのか来ないのか解らないイノシシを待って、
咳もしないでジット待つのは忍耐がいる。
トランシーバーは使わない。イノシシは微かな音に反応して脇にそれるからだ。
私はいつもタツミ役だ。文句は言えない。
勢子の連中は猟の次の日は脚がカチカチになってしまい、トイレでしゃがめないほどだ。
そんな思いまでしてもなお、猟をするアンタの気が知れないとよく言われる。
位置に着いた。防寒服の上に毛布の中程を30センチ程裂いて首から上を出して体に巻く。
松の木の根本に陣取った。銃は散弾銃でアメリカ製のレミントン1100。弾は9粒丸。
50メートル以内なら確実にイノシシを倒す事が出来る。
スラック弾は使わない。ライフルに比べて精度の悪い銃身で一粒弾を使うのは賢明ではない。
熊笹の中を一目散に駆け抜けるイノシシを撃つのは散弾のほうがあたる確立が大幅に高くなる。
この銃は私の実猟の師匠で、今は亡き実兄のお下がりだ。
兄が15年間、私が20年使っているから、35年もの長い間
役に立ってきたお宝のような銃である。
四つ足猟でも鳥猟でも、クレー射撃のときでも、この銃だ。
「一銃主義」兄の遺言になってしまったが、最近ようやくこの意味が分かってきた。
振り返って数えてみると、この銃で7万発以上撃っている。
一度も故障をしたことが無い。不発も、部品交換も無く、引き鉄を引けば必ず弾が出る。
頼もしい相棒だ。今では体の一部になっている。
散弾銃の良さは、色々な弾が撃てると言うところにある。
kamaです。
こちらのお話の解決編として「-事件記者 朽屋瑠子-」という作品も書かせていただきました。
こちらの作品に登場したリーダーが主要メンバーとして登場します。
合わせて御覧ください。