私の妻の話です。
ある日の夜、先に布団に入っていた妻が、スマホを片手にクスクスと笑い出しました。
どうしたの、急に笑い出して。何かいいことあった?と尋ねると、
「中学校の頃の親友から久々にラインで連絡が来た」
と言います。
へぇ、どんな友達?女の子?と、私も布団に入りながら聞きました。
「A子っていう女の子。3年間ずっと同じクラスでさ、人見知りで私しか友達がいないから、いっつも私にくっついてたんだ」
妻は懐かしむような、嬉しそうな声で答えました。
「小さくておとなしくて、なんか保護欲がわいちゃう子でね…地元から離れて元気にしてるみたい」
その後、灯りを消してからも妻はA子との思出話を続けました。
修学旅行で妻と同じグループにしてほしいと担任に懇願したこと、進路希望に悩んで妻に相談したことなど…妻はどこか誇らしげに語っていました。
今はどちらかと言うとおとなしいタイプの妻にも、友人に慕われる時期があったのかと、私は興味深く思い黙って話を聞き入っていました。
数日後、妻の弟から電話がありました。
以前私が貸した釣竿を返しに行きたいという、他愛の無い連絡でした。
私はもののついでに、義弟に先日の妻の話をしました。
普段は物静かな妻が随分楽しげに旧友のA子のことを話していたよと。すると義弟が言いました。
「あぁ、生徒会長だったA子さんね。姉貴はいっつもA子さんにくっついてて、もう金魚の糞状態でしたよ。A子さんも少し迷惑そうでしたけど、いい人だから邪険にできなかったんでしょうね」
私は耳を疑いました。誰か別の人と間違えているのではないかと。しかし義弟曰く、友達のいなかった妻が家で口に出す唯一のクラスメートの名前だったので、A子のことはよく覚えてると言うのです。
さらに義弟は続けました。
「でもA子さん、卒業間際に亡くなったんですよ。受験に失敗して、自殺したんです」
私は混乱しました。
先日妻はA子からラインが来たと言っていた。
しかし義弟はA子は亡くなったという。
やはり妻の語るA子と義弟の話すA子は別人なのだろうか。
妻は誰から連絡を受けたのか。
全て妻の嘘なのか。
それ以来私は妻のことが少し怖くなりました。
A子のことは、もちろん聞いていません。
怖いけど気になる…
エエ子や
入れ替わりかな
あなた、A子から会わないかって誘われちゃった。
行ってもいい?たぶん泊まりになると思うけど。
はい、クロ
怖いね、
A子さんに執着しているのは、むしろ、奥様の方でしょうね。
生前のお二人とは、真逆の印象で捉えていらっしゃるようですし。
LINEは、本当に届いていますか?
怖いですね。奥様。
栄子と英子。
いい?ボウヤ。”女の嘘はアクセサリー”なのわよ。
A子は誰なのか?
その真相はまだ謎に包まれたままだゾ