影を踏む
投稿者:高崎 十八番 (6)
小学生時代、石田さんは男子に混じって外で遊ぶ活発な女の子であった。
放課後になると、校庭で男子5人と女子3人の石田さんを含めた計8人で行う鬼ごっこは、陽が沈み、辺りが真っ暗になるまで夢中になって遊んだという。
そんな中、ある1人の男子が「普通の鬼ごっこは、もう飽きた。影踏み鬼をやろう」と皆に提案し始めた。石田さんを含めた周りの子達は、影踏み鬼という遊びが何なのか分からず、提案者である男子に遊び方やルールを聞いてみる事にした。すると提案者は、影踏み鬼についての説明を淡々と皆に説明していく。彼のあまりの饒舌ぶりに、石田さんはなんとなくだが遊び方を理解し、要は体にタッチするのではなく、鬼は相手の影を踏んで捕まえるという遊びなのだと認識した。
先ずは言い出しっぺである提案者が、鬼となり影踏み鬼が始まった。石田さんは、外で遊ぶのが好きな女の子ではあったが、致命的な事にクラスで2番目に足が遅い。開始5分も経たない内に、石田さんは鬼に影を踏まれてしまった。影を踏まれてしまった人は、次の鬼となる。
石田さんは、その場で顔を両手で隠し、「いち、に、さん、しー、ご」、と軽快に数を読んだそうだ。
すると、「にじゅう!」と石田さんが大声で数を読んだ際に、近くの方からグニャッと何かが潰れるような不快な音がした。
石田さんは、それでもお構いなしに数を数えていく。リズミカルに数を数えていく石田さんではあったが、途中で何故か異常な静けさを周りから感じた。もしかして皆帰ったのかなと、恐る恐る目を開けて見ると、そこには石田さん以外誰もおらず、辺りはすっかり暗闇と化していた。
翌日、学校に登校すると、影踏み鬼で遊んでいた2人の生徒が、行方不明であると、朝の全校集会で生徒達に伝えられた。
生徒達の中では、「どうせすぐに戻ってくる」、「家出ってやつかな?」、と憶測だらけの会話で溢れ返っていたが、数日、数週間、数ヶ月が経っても行方不明の児童が帰ってくる事はなかったそうだ。そして石田さんの通う学校では、何故か鬼ごっこが禁止の遊びへと変わってしまったのだという。鬼ごっこという遊びを禁止にする理由から推測されるのが、不可思議に児童が行方不明となった原因を、学校側や保護者達は知っているのかもしれないという疑念である。そして件の行方不明について何か秘密が隠されており、今も尚、大人達は事件を隠蔽し続けようと必死になっているのかもしれない。
これから先も。
ずっと永遠に。
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