写真が趣味のTさんが深夜、展望公園に夜空の撮影をしに行ったときの体験談。
Tさんはひとり、歩きで展望公園に向かった。展望台公園は高台にあるので、傾斜の緩やかなコンクリートの坂を登っていく。
右を見ても左を見ても広大な緑が広がっていおり、深夜なので確認はできないがその向こう側には海が見える。風に揺れる草の音。自分の足音。聞こえる音といえばこの二つくらいだ。
展望公園に着くと三脚を立て、撮影の準備を始めた。障害物も灯りもないので、肉眼でも天の川がはっきり見える。肉眼で見える美しい景色を、そのまま写真に収めるのはなかなかに難しいらしい。
雲の流れが早く「もやる(雲で星空が見えなくなること)」と撮影のタイミングを失ってしまう。カメラの角度やレンズでも変わってきてしまうので、良い写真とを撮るため試行錯誤をしていた。
-異変を感じる。
この時間帯、展望公園に居るのはTさんひとり。
しかし、草むらの下方から規則正しいリズムの足音が聞こえてくるのだ。
ザッ、ザッ、ザッ。
その足音はまるで行進をしているかのよう。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
足音は、ひとりではない。
右から左から‥音だけでも複数人いるのがわかる。
急いでカメラを片付けると
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
と頭の中で反復しながら小走りで帰っていった。
「悪いことをしたわけじゃないのになんで謝ったんですか?」
「実は向かう最中に小便がしたくなってさ、坂の途中でしちゃったんだよね。したら近くに祠があるのに気づいて」
お手洗いの無いところで長居をするときには、事前に用心しておいた方がいいのかもしれない。
(※仮名を使用しています)
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