早々に家を出てイラストレーターとして活躍している息子が久々に帰ってきた。
普段は忙しいと言って盆や正月にも帰って来ないが、海外で個展を開くらしく、その前にゆっくりしたいんだそうだ。
個展に出すカタログを見せてもらったが、親の欲目抜きに素晴らしい作品ばかりだった。
昔から絵を描くのが好きだったなぁ、等と思い出に浸りながらページをめくった。
「すっかり上手くなっちまって…でも、ちっちゃい頃の絵も味があって好きだったぞ?よく描いてた顔の絵なんか、目は逆にしたUだし、口が顔の3分の2もあって…今じゃ描こうと思っても描けないだろう?」
「今でも描けるよ…」
息子はそう言うと、カバンからスケッチブックを出してサラサラと描き始めた。
「昔ここで本当によく見たんだよ。だから、今日も近くのホテルで寝るからね」
息子はそう言うと、描きあげた絵を私に見せた。
そこには、細すぎて逆Uになった目に顔の3分の2が口で占められたリアルな女の顔があった。
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