百鬼夜行
投稿者:海野 (1)
(※虐待描写があります。)
私には幼い頃の記憶がほとんどない。しかし、ひとつだけ強烈に記憶に残っている不思議な体験がある。その話をしたいと思う。
私は、親から日常的に暴力や精神的な虐待を受けていた。殴ったり蹴ったりされるのは当たり前。その度に幼児にかけるような言葉ではないような暴言ばかりを浴びせられていた。
親が気に食わないなら出て行けと言われ、俺の稼ぎで買ったものだからと服を剥ぎ取られ、外に締め出されるといったことも何度もあった。
とにかく、いきなり爆発する人で、爆発したら何をされるか分からない。何が親の地雷を踏むかも分からず、ただただ怒らせないようにと神経を尖らせていた。
3歳頃の話である。その日も、ちょっとしたことに言いがかりをつけられ、私は殴られていた。殴られた私がぐったりしていると、親は、引き出しからゴミ袋を出してきた。
「お前なんてゴミだ。捨ててやる。」
たしか、そんなことを言われたような気がする。抵抗する気力もなく、私は腕を後ろ手に縛られ、そのまま燃えるゴミの袋に入れられた。
今思うと、そのまま袋を閉じられたら私は死んでいた。しかし、親がそうしなかったのは、本当に捨てる気があったのではなく、私に対し、「俺に逆らうとこうなるぞ」というような脅しをかけたかったものだと思われる。
それでも、そのまま袋ごと持ち上げられ、家から出されたときは恐怖で声も出なかった。
外は真っ暗だった。正確な時刻は覚えていないが、深夜と言って差し支えない時間帯であった記憶がある。暗闇と、この後どうされるのかということに体を竦ませながら震えていると、親の車へと運ばれていくようであった。
後部座席に乱暴に投げ入れられた。ドアが閉まる音と、それに続いて親が運転席に乗り込む音、そして低く唸りはじめたエンジンの音に、私の恐怖はピークを迎えた。
逃げようと、暴れようとしたが、縛られた腕と袋が動きを制限する。どんなに泣き叫んでも、運転席の座席の陰からちらりと見える親の後ろ姿はぴくりともしなかった。
そんな時間が数十分続いた。私は泣き叫びながらも、窓の外の様子を観察していた。いざというときには歩いて逃げられるように、という一心であった。
私を乗せた車は、家のある市街地を抜け、田園地帯を走っていた。そこで、私は「ああ、山に捨てられるんだ」ということを理解した。
田園地帯の先には標高400mほどのちょっとした山がある。その山の頂上には神社があり、その周辺にはちょっとした土産屋や食事処もある。ハイキングとして何度か登ったことのある山であった。
山の中腹までは、車でも行くことができる。神社の参道として、長い石段が麓から続いており、その中間地点には、阿吽像を奉る大きな山門がある。その山門の前までは車道が通っているのである。
今この車が走っている田園地帯の道は、この山門へと続いているのであった。
案の定、車のライトに照らされうっすらと窓から見える景色は、徐々に木々の数を増やしていった。そのうち、傾斜やきついカーブを感じるようになった。
その頃には、完全に予想が当たったことを理解し、私は泣くのも暴れるのも止めた。私は諦めたのである。
不意に車が止まり、車外へと引き出された。目に入ったのは、ライトに照らされた、下へ下へと伸びる石段である。その先は暗闇に飲まれ、終わりが見えない。その光景は、私の絶望感を深くした。
私はもう、なされるがままであった。そのまま引きずられ、道の反対側へと連れていかれた。
そこには、やはりと言うべきか、例の山門が あった。山門の両端の大きな木彫りの像は、昼間に人と一緒に見たときでさえ不気味に感じていたものだが、このような状態で、暗闇に浮かび上がるその恐ろしい表情を目にし、私はもう声も出なかった。
大人しくなったことをいいことに、親は私をゴミ袋から引きずり出すと腕を掴み、そのまま山門を通り抜け、その上に続く石段を少し上がったところに連れていった。
そして、恐怖で呆然としている私をそこに放置し、自分は石段を早足に降りていった。しばらくすると、車のドアが閉まる音が聞こえ、そのままエンジン音は遠ざかっていった。
完全に、捨てられた瞬間であった。
私は、足元の石段の端に座り込んだ。今更追いかけても車には追いつけない。もうどうしようもなかった。
そのまま膝に顔を埋め、流れてくる涙を受け止めるほかなかった。
幸せになりなさい。というメッセージなのかなぁと思いました。
両親の激しい喧嘩中や、虐待された人が鬼や異形を見たというケースは実は多い。これで4ケース目である。怖いに投票しました
↑の人のコメントが怖かったです
怖い押しました
↑人の強い感情が、何かそういう異界との境を揺さぶることがあるのでしょうか
考えさせられます
こういう話を読むようになって、自分が虐待されていたのだと知った。
3歳時の記憶なのに事細かく覚えているのが凄いです!
三才の記憶なんて全くないなぁ!
幼稚園ぐらいならあるけど!
同級生の女の子が「私は歯医者さんと結婚する」と言ってた❗
20歳ぐらいのとき おかんが「かあくん歯医者になりたいって言ってたなぁ」と同じマンションのいっこしたの男の子の話してた!
数十年来の疑惑が
溶けた瞬間やったで!
子供の時に親からお仕置きをされて家に入れてもらえなくて、近所の神社のベンチで寝たことはあります。
笛の音を聴いている感じの夢を見ました。メロディ覚えてないんですが。
3歳の記憶というところを自分に当てはめるとまったく覚えてない
もしかしたら3歳という認識がないだけで覚えてるのかもだけど
調べてみると3歳が23.2%という記事を見つけたので、あながちないとも言い切れないのかな?って・・
記憶が鮮明すぎる気もするけど、ってところが気になりすぎてしまった
幸せになって欲しい
かわいそう過ぎて、泣きそう。自分がしていること、反省します。
俺も幼い頃に好き嫌い激しくてご飯に文句言いまくってたら裸にされて外出された記憶がある。
大人になってから母に聞いたけどそんなことする訳が無いじゃないって言われたけど強烈に覚えてるんだよな。
捨てられたと思って泣き叫びながら走り回ってた。
霊的なことはなんもないけど泣き叫びながらフルチン男児が走ってたもんだから若い女性が悲鳴上げてたよ
虐待じゃないけど友達が森か何かで迷ったとき、急に視点が高くなったと思ったら1つ目で右手しかない何かに肩車されてそのまま車通りが多い道に連れて行かれて助かったみたいな話をしてたな。