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不思議体験

高崎 十八番さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

マタニティブルー
短編 2024/04/18 22:09 1,405view
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 流産を2度経験し、やっとの想いで待望の我が子を出産したCさんは、酷く辛い産後鬱の日々に直面していた。出産前までは、家事や仕事も普通にこなせていたが、今では倦怠感が思考を支配し、動く事すらも億劫なのだという。精神科に通院してみたりもしたが、薬を処方されるだけで体調が回復する兆しも一切見えなかった。

 今後の事を考え、Cさんは旦那に全ての家事を任せ、赤ちゃんへの授乳だけに専念する事を決めた。右乳15分、左乳15分の合計30分間の授乳を3時間おきにゆっくりと飲ませる。夜に赤ちゃんが眠れば、次は旦那が赤ちゃんへと変わっていく。毎晩のように性行為をせがまれるが、産後鬱で何もやる気のないCさんにとって、苦痛の極みだったという。

 赤ちゃんが夜泣きを始めると、Cさんは我が子を抱いて、外の公園へと抱っこして連れて行く。人気のない夜の公園に設置された東屋の中で授乳をしていると、此方にゆっくりと歩いてくる赤子を抱いた女性がいたという。Cさんは、その人も赤ちゃんの夜泣きをあやす為に、この場所に来たのだろうと察した。Cさんは、赤子を抱いた女性に向かって「こんばんわ」と話しかけてみた。しかし返答はなく、どこか表情は虚ろ気味であった。毎晩、赤子が夜泣きをする度あやすのだから、心身共に疲労が蓄積されているのも当然の事だなとCさんは同情した。

 するとその女性は、突然Cさんに向かって「私の子、抱いてくれないかしら?」と神妙な面持ちで言ってきた。一瞬、どうしようか迷ったCさんではあったが、断るのも申し訳ないと思い、抱っこする事に決めた。他人の子を抱っこしてみるが、中々泣き止まない。それどころか次第に五月蝿くなっていく。Cさんは酷く憤りを感じ、「いっそこの子の細く柔らかい首を絞めて、二度と泣けぬようにしてやりたい」と思ったそうだ。

 殺気立つCさんの隣で、我が子が乳欲しさに泣き始めると、そこで漸く我に返り、先程までいた母子はいなくなっていた。「夢を見ていたに違いない」、「私は疲れているんだ」、とCさんは思い、自宅へ帰ると項垂れるようにしてその後眠りについた。

 それから数年の時が経ち、我が子が原因不明の病に侵されて亡くなった。次第に夫婦の仲は険悪となり離婚。今となっては故郷に帰省したCさんではあるが、あの晩の出来事は今でも鮮明に覚えているらしく、片時も忘れた事はないのだそうだ。

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コメント(2)
  • 赤ちゃんって夜泣きするんだよね。

    2024/04/20/05:37
  • うちも丁度子育て最中だから気持ちわかるわ~

    2024/04/22/16:48

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