石川県と富山県の県境に位置する牛首トンネルは、近隣でも有名な心霊スポットです。
山道の中にある、車一台が何とか通れる程度の広さのトンネルで、
周辺にあまり灯りが無いため夜に訪れると非常に不気味な雰囲気です。
この牛首トンネルに関しては、車で通ったらトンネル内に白い人影が佇んでいた、
老婆の声が聞こえた、トンネルを通って暫く車を走らせていたら後部座席に誰かが
座っている気配がした……等々、様々な怪談話が囁かれています。
そしてこの牛首トンネルの不気味さに拍車をかけているのが、
何故かトンネル内の中央辺りに置かれているお地蔵様です。
暗いトンネルの中にお地蔵様がいるというだけで不気味ですが、
更にこのお地蔵様、首が取れて無くなっていた、夜中に見ると血の涙を流していた等、
恐ろしい噂が絶えません。
そもそも何故、トンネルの中にお地蔵様が置かれているのでしょうか?
これには諸説あるのですが、その中の1つ、私が大学時代に先輩から聞いた、
「平家の落人村」の話を紹介しましょう。
牛首トンネルから少し離れた場所に、俱利伽羅峠という場所があります。
かの源平合戦で木曽義仲が平家の軍勢を打ち破った「倶利伽羅峠の戦い」の舞台となった場所です。
この戦いで敗れた平家の武士達の一部は、山の中を通って現在の
牛首トンネルの近くにあった村に落ち延びたと言います。
平家の武士達は暫くの間その村で平穏に暮らし、
中には村に元々住んでいた女性と結婚して家族を作った者もいたそうです。
しかし、平穏な時間は長くは続きませんでした。
倶利伽羅峠の戦いから10年程過ぎて、世が源氏が治める鎌倉幕府の時代となった頃、
「牛首の村に平家の落人が住んでいるらしい」という噂が辺り一帯に流れます。
真偽を確かめるため、当時近隣一体を治めていた領主が集落に武士の一団を差し向けました。
落人達は敢え無く武士達に見つかってしまい、抵抗空しく皆殺しにされてしまいます。
しかも、その際に村に住んでいた人々も皆、平家の落人を匿った罪で殺されてしまいました。
その後暫くして、牛首の村があった辺りの場所を通った旅人達の間で、
「平家の落人の亡霊」を見たという噂が流れ始めます。
噂を聞き、亡霊に呪われるのでは無いかと恐れた領主は、
集落があった場所にお地蔵様を置き、平家の落人や村人たちの霊を鎮めたそうです。
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