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不思議体験

とくのしんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

続 空き巣常習犯最後の仕事
長編 2024/10/01 09:30 1,878view
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「驚きました。自分と同じような体験をされている方がいるとは思いませんでしたから」
XのDMが届いたのはつい先月のこと。私が8月に投稿した作品『空き巣常習犯最後の仕事』を読んで連絡をしてくれたのは、中部地方在住の山岸さんという30代の男性だ。

廃墟巡りが趣味だったという山岸さんは、かつてある地方に遠征に行ったときに身の毛がよだつ恐ろしい体験に遭遇する。それが前述した投稿作品での内容に酷似しているという。今回、山岸さんが語った体験談を紹介する。

もう15,6年前の話なんですけどね。当時、廃墟巡りをし始めて2~3年くらいだったと思います。よく見る廃墟巡りのブログがありましてね、そこで情報を仕入れてました。コメントしたのがきっかけだったと思います、管理人の奥村さんと仲良くなって、何度か探索に同行するようになって。私は中部地方在住なんですが、奇遇にも奥村さんも同じ地方だったこともあって、交流が深まりました。

ある日、奥村さんから電話がありましてね。
「〇〇ダムって知ってる?そこに沈んだ村に興味ない?」
という内容でした。その年の夏は、特に暑かったのを記憶しています。確か取水制限が出る程だったんじゃないかな。雨がろくに降らず、ダムの水位が日に日に下がっていった。それでダムに沈んだ村が水面から露呈しているのを、偶然奥村さんが通りがかって見たそうで、それで私に連絡してきたんです。

そのダムは昔から心霊スポットでも知られていましたんですが、それとは別にダム付近に幻の廃村があるなんて言われてました。でも情報が錯綜していて、場所は特定されずじまいだったはず。私も幻の廃村とやらには心惹かれたんですけどね(笑)
奥村さんもその廃村については散々調査したそうでしたが、偶然にも行きついたのはその沈んだ方の廃村でした。

誘いを受けた数日後の土曜日。奥村さんと最寄り駅で待ち合わせをして、乗り合わせで例のダムに向かいました。その日もからっからに晴れていて、それはもう暑くてエアコンをガンガンにつける程でした。ダムについて車を降りると、山の中ということもあって市街地より幾分マシだったんですが、それでもかなり暑かったのを覚えています。

ただその暑さのおかげもあって、奥村さん曰く数日前よりもずっと水位が下がっているとのことでした。ダムから見下ろすと沈んだ村が見えました。家屋の屋根がたくさん水面から顔をのぞかせていて、場所によっては家がまるまる水面から出ているところもあって。しばらく上から眺めていたんですが、奥村さんが下りてみようと言い出した。ダムの周囲を回っていると、下りられそうな場所がありましてね。下りていいものか迷いましたが、人気も少なかったことから奥村さんに付いていく形で先に進みました。

上から見るのと、下から見るのではまた雰囲気が全然違った。当時の面影そのままにとまではいかないまでも、それに近いものを感じることができました。探索を続けていると、一際大きな家屋を見つけて、奥村さんと中に入ってみました。玄関には鍵がかかっておらず、中に入ると大きな農家の家という感じで。土間の先に廊下が広がっていて、すぐ左手に階段がありました。奥に台所だったかな、その途中にドアがいくつも見えました。

中に入ったりしたんですが、水の中に長く沈んでいたこともあって床がぶかぶかで抜けそうだったし、程ほどで外に出た。奥村さんはブログのネタにしようと熱心に写真を撮られていましたね。それで陽も陰ってきた頃、そろそろ帰ろうと話になって。駐車場に戻ったときには、車は自分たち1台しか残ってなかった。

それじゃ帰ろうと車を出して、晩飯何を食うかとかそんな話をしていました。しばらく走っていると、運転していた奥村さんが変なことを言いだした。
「この道、さっきも通ったよね?」
山道だし似たような道が続くし、気のせいじゃないですか?なんて言っていたんですが、言われてみれば同じ道をグルグルと回っているような感じがしてくる。標識も何もない道に加え、奥村さんの車にはナビが無かったんですが、どう見ても同じ道を走っているようにしか思えなかった。

・・・不気味に思ったんでしょう、奥村さんは狭い道でUターンをしてきた道を戻りました。いったん、ダムの駐車場に戻ることにしたんです。そのときはもう辺りは真っ暗でした。駐車場を目指していたんですが、おかしなことに一本道のはずなのに走れど走れど駐車場が見えてこない。この不可思議な状況に、私も奥村さんも口数はめっきり減っていました。

それからしばらく走っていると、集落が見えてきたんです。お互いほっとして、とりあえずここがどこか、それと下りる道を聞こうと先を急ぎました。集落といってもぱっと見、10~20軒位の家屋がポツン、ポツンと点在するような場所でして。でもおかしいんです。どの家も明かり一つ点いていなかった。

「もしかして、これが幻の廃村か・・・?」
ふと奥村さんがそんなことを口にした。私もその言葉を聞いて、固唾を飲んで景色を眺めていたのを覚えています。見れば時刻は午後7時程でしたが、もしかするとこんな山奥の集落だし、戸締りが早いのかもしれない。それに空き家が多いんじゃないか?そんなことを話しながら、どこか1件くらいは住んでいるかもしれないから訪ねてみようと車を停めました。

車から降りて2人で別々の家を訪ねてみましたが、どの家も人気がない。一度合流したのち、一際大きな家を訪ねてみることに。しかし、他と同様にやはり人気はない。仕方なく戻ろうとしたとき、奥村さんがふいに玄関に手をかけました。

ガラガラガラ・・・

昔懐かしい引戸の音を立てながら玄関が開いた。中はガランとして、月明りでうっすらと家の様子が見えました。玄関から真っすぐに廊下が広がり、左手に階段が。途中いくつか部屋のドアが見えたんですが、そこであることに気づいた。

「これ、昼間見た家にそっくりだ」
私がそう口にすると、奥村さんも同じことを思っていた。そこで引き返せばよかったんですが、ついこの空き家が気になってしまった。廃墟エクスプローラーの血が騒ぐというか、そんな感じだったと思います。奥村さんと一歩、また一歩と歩みを進めた。古い廊下をギシ・・・ギシ・・・と軋む音を立てながらゆっくり進むと襖があった。そこは仏間でした。梁にはその家の先祖の遺影だろうか、いくつも写真が飾られていた。部屋の奥に襖があり、隣は居間だった。

中央にちゃぶ台があってお互い携帯のライトを頼りにしていましたが、ちゃぶ台の上に茶菓子が置いてあるのを見つけました。何気に袋を手に取ってみると、賞味期限が昭和62年4月となっていましてね。ですが、不思議なことに“たった今、開けたような”感じがするんです。だって、中身のせんべいにはカビ一つ生えていなかったんです。

居間にあったカレンダーは昭和61年7月となっていたし、それだけみるとまるで昭和にタイムスリップしたような感じすらしました。茶菓子といい妙な雰囲気に、ほんの先程まで誰かがいたような錯覚すら覚える程でした。そうこうしているうちに奥村さんがもう少し調べてみると言い残し、居間から出て行った。その数分後でした。

ピンポーン

不意になったインターホンの音に、心臓が飛び出すかと思った程驚いた。しかし、奥村さんが私を驚かせようとやったことだろうと、そう高を括っていたところ

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