ある晩、オカルト研究家の田口さんは、心霊スポットとして有名な山中のトンネルを訪れることにしました。そのトンネルは、地元では「囁きのトンネル」として知られており、夜になると不気味な囁き声が聞こえると言われています。
田口さんは、心霊現象の真相を確かめるために、カメラと録音機を持ってトンネルに向かいました。トンネルの入り口に立つと、冷たい風が吹き抜け、背筋がゾクッとしました。彼は懐中電灯を片手に、トンネルの中へと足を踏み入れました。
トンネルの中は暗く、ひんやりとした空気が漂っています。田口さんが歩を進めると、突然、背後からかすかな囁き声が聞こえてきました。振り返ると、そこには誰もいません。彼は録音機を手に取り、囁き声の方向に向かって歩き出しました。
囁き声は次第に大きくなり、まるで誰かが耳元で話しかけているかのようです。田口さんは心臓が高鳴るのを感じながらも、恐怖に負けずに前進しました。トンネルの奥にたどり着くと、囁き声はピタリと止みました。
田口さんが懐中電灯を照らすと、そこには古びた石碑が立っていました。石碑には、かつてこの場所で事故があったことが刻まれており、多くの命が失われたことが記されていました。その瞬間、田口さんの背後から冷たい風が吹き抜け、再び囁き声が聞こえてきました。
彼は振り返ると、そこには白い影が立っていました。影はじっとこちらを見つめ、口元には不気味な笑みを浮かべています。田口さんは背筋が凍る思いでその場を離れようとしましたが、足が動きません。
突然、影が田口さんに向かって手を伸ばしてきました。彼は必死に逃げ出し、トンネルを飛び出しました。外に出ると、冷たい風が吹き抜け、彼の背中に冷や汗が流れました。
後日、田口さんはそのトンネルについて調べてみると、かつてその場所で大規模な事故があり、多くの人々が亡くなったことがわかりました。あの囁き声は、亡くなった人々の魂の叫びだったのでしょうか。今でも、あのトンネルの中で彼らは誰かに助けを求め続けているのかもしれません。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。