冷たいスマートフォン
投稿者:ほらりん (21)
ある冬の夜、大学生のアヤは、深夜の図書館でレポートを書いていた。周りは静まり返り、ただ彼女のタイピング音だけが響いていた。外は冷たい風が吹きすさび、雪がしんしんと降り積もっていた。
その時、アヤのスマートフォンが机の上で震えた。メッセージの通知だった。画面を見ると、見知らぬ番号からのメッセージが届いていた。「助けて…ここは寒い…」とだけ書かれていた。アヤは誰かのいたずらだと思い、無視することにした。
しかし、その後も次々と同じ番号からメッセージが届き続けた。「ここはどこ?」「寒い…助けて…」「アヤ、助けて…」アヤは不安になり、スマートフォンをオフにした。だが、オフにしてもメッセージは止まらず、画面に次々と現れた。
アヤは耐えきれなくなり、図書館を飛び出して寮に戻った。部屋に入ると、暖かさが彼女を迎えたが、心の中は冷たい恐怖でいっぱいだった。スマートフォンを再び確認すると、画面には見知らぬ顔の女性が映し出されていた。顔は青白く、目は真っ黒で、口からは白い息が漏れていた。
その瞬間、アヤの体が凍りつくような寒さに襲われた。息が白くなり、指先が凍えていくのがわかった。スマートフォンは手から滑り落ち、床に落ちた。画面には「助けて…」のメッセージが連続して表示され続けた。
恐怖のあまり、アヤはスマートフォンを拾い上げ、窓から外へ投げ捨てた。スマートフォンは雪に埋もれ、見えなくなった。しかし、アヤの体はまだ冷たさに包まれていた。まるで何かに取り憑かれたかのように。
その夜、アヤは一睡もできず、ただ冷たさと恐怖に震え続けた。翌朝、アヤはスマートフォンを拾いに行ったが、見つかることはなかった。それ以来、アヤはスマートフォンを持たず、誰とも連絡を取らない孤独な生活を送るようになった。
誰も知らない、アヤが感じた冷たさと恐怖が、今もなお彼女の心に深く刻まれている。冬の夜、彼女の心は冷たいスマートフォンの呪縛から逃れることはできなかったのだ。
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