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ヒトコワ

ほらりんさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

久しぶりに会った弟
短編 2024/10/26 13:41 786view

ある寒い冬の夜、久しぶりに実家に帰省した美咲は、幼い頃に亡くなった弟のことを思い出していました。弟の翔太は、10年前に不慮の事故で命を落とし、美咲はその悲しみを乗り越えるのに長い時間を要しました。

実家の古びた家に入ると、懐かしい匂いが漂い、思い出が蘇ります。両親は既に他界しており、今は美咲一人がこの家を守っています。夜も更け、静寂が家を包む中、美咲は弟の部屋に足を運びました。

弟の部屋は、彼が亡くなった時のままに保たれていました。美咲はベッドの上に座り、弟の写真を手に取りました。その瞬間、背後から冷たい風が吹き抜け、部屋の電気が一瞬消えました。驚いた美咲は振り返ると、そこには見覚えのある小さな影が立っていました。

「お姉ちゃん…」

その声は確かに弟の翔太のものでした。美咲は恐怖と驚きで声が出ませんでしたが、影はゆっくりと近づいてきました。翔太の姿は、10年前のままの幼い姿でした。

「翔太…?どうしてここに…?」

翔太は静かに微笑みました。「お姉ちゃん、僕はずっとここにいたんだよ。でも、もう一度お姉ちゃんに会いたくて、こうして戻ってきたんだ。」

美咲は涙を流しながら、弟の手を取ろうとしましたが、その手は冷たく、まるで霧のようにすり抜けました。翔太の目には悲しみが宿っていました。

「お姉ちゃん、僕はもうこの世にはいられない。でも、お姉ちゃんが幸せでいてくれることが僕の願いなんだ。」

その言葉に美咲は胸が締め付けられるような思いを感じました。「翔太、私はあなたを忘れたことなんて一度もない。あなたのことをずっと思っていたわ。」

翔太は微笑みながら、美咲に最後の言葉を残しました。「ありがとう、お姉ちゃん。僕はこれで安心して眠れるよ。さようなら。」

その瞬間、翔太の姿はふっと消え、部屋には再び静寂が戻りました。美咲は涙を拭いながら、弟の写真を胸に抱きしめました。翔太の最後の挨拶は、美咲の心に深く刻まれ、彼女は弟の思い出と共に生きていくことを誓いました。

しかし、その夜、美咲は奇妙な夢を見ました。夢の中で、彼女は再び弟の部屋にいましたが、部屋の中は異様な冷気に包まれていました。翔太の声が再び聞こえてきました。「お姉ちゃん、助けて…」

美咲は夢の中で弟の声を追いかけましたが、どこにも彼の姿は見当たりませんでした。突然、部屋の隅から不気味な影が現れ、美咲に向かってゆっくりと近づいてきました。その影は、翔太の姿をしていましたが、顔は歪んでおり、目は真っ黒でした。

「お姉ちゃん、僕を忘れないで…」

その言葉と共に、影は美咲に襲いかかりました。美咲は恐怖で目を覚まし、冷や汗をかいていました。部屋の中は静まり返っていましたが、彼女は確かに感じました。弟の魂はまだこの家に囚われているのだと。

その後、美咲は何度も同じ夢を見続けました。弟の魂が安らかに眠ることができるように、彼女は家を離れることができなくなりました。美咲は弟のために祈り続けましたが、彼の魂は永遠に彼女を追い続けるのでした。

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