エリコちゃんとの思い出
投稿者:LAMY (11)
稲沢さんは北海道のある地方都市で幼少期を過ごし、高校卒業と同時に進学のため地元を出た。
札幌の大学に進学してそのままそこの医療系企業に就職。
地元との縁は年に二度、盆と正月に帰省する以外はほぼ完全に切れていたという。
四十路になった稲沢さんは妻子こそいなかったものの、趣味と仕事を両立させた充実した日々を送っていた。独身故の寂しさはあったが、その分自由で何にも縛られることのない毎日だった。
中年になって社会人としても脂が乗り出し、仕事の疲れは趣味の釣りで思う存分発散する。
そんな生活を続けていた彼の元に母親の訃報が舞い込んできたのは思いがけない突然のことだった。
「もう七十超えてましたからね……言われてみればそろそろ何かと危険になってくる歳だったんですけど。持病もないし会う時はいつもピンピンしてたから、僕も兄貴たちも油断してました」
冬場の凍りついた歩道橋から足を滑らせて転げ落ち、そのまま頭を強打して亡くなってしまったのだ。
稲沢さんは葬儀のために地元へ戻り、そこで兄弟達と実家をどうするか話し合った。
あいにく父は息子達が二十歳そこそこの頃に大病を患って他界していたので、このままでは実家に住む人間がいなくなってしまう。
しかしかと言って今の仕事を辞めて家を相続するなんて出来ないし、稲沢さん以外の兄弟達には妻子もある。結局みんな家を相続するのは無理だということで、家ごと売りに出してしまおうということになった。
職場に事情を伝えて長期休暇を取得し、実家の片付けに従事する中でだ。
稲沢さんはかつて自分が使っていた──当然、今はもう物置きになっている──部屋の中をあれこれ懐かしみながら整理していると、そこで一冊のアルバムを見つけた。
小学校の卒業アルバムだった。掃除中に懐かしい品を見つけて手が止まってしまうというのはあるあるだが、中でもこの手のアルバムは一番時間を食い荒らす。
例に漏れず稲沢さんは手を止めてアルバムをめくり、過日の少年時代に思いを馳せ始めた。
卒業してから一度も会っていないやつ、なんだかんだで今まで付き合いが続いてるやつ。
当時嫌いだったやつ、陰でバカにしてたやつ、面白くて人気者だった先生……。
クラスメイトの名前と顔写真がずらりと並んだ見開きページをじっくり眺めていると、そこでふと稲沢さんはあることに気が付いた。
「エリコちゃん」がいないのだ。
エリコちゃんはいつもにんまりと笑っている明るい女の子だった。
くりくりした大きな目が特徴的で、誰にでも人懐っこくて分け隔てがなかった。
そんな子だから男子からの人気は高くて、いわゆる恋バナに花を咲かせる時なんかは結構な数の男子がエリコちゃんの名前を挙げていたのをよく覚えている。
そして稲沢さんもその中の一人だった。
よく笑い、よく喋るエリコちゃんに対して抱いたむず痒い感情。あれは間違いなく彼の人生における初恋だった。
しかしそんな思い出深いエリコちゃんの名前も顔もアルバムの中にはない。
何かの手違いで載せ忘れてしまったのだろうかとも思ったが、クラスへのメッセージを記した寄せ書きや将来の抱負を書いた作文などのコーナーにも彼女の名前はなかった。
どういうことだろうと思って記憶をひっくり返していく内に、稲沢さんはある可能性に思い当たったという。
面白かった
エリコちゃんは、妖怪?
にしては力が強すぎる!
ゾワッとしました
私もエリコちゃんは妖怪なのかなと思いました
百々目鬼?みたいな
凄く読みやすくて引き込まれました
北海道ということは妖精みたいな?コロポックルとか?違うか…
Eee
ここ数年で一番面白い
全員違う姿を描くのかと思いきや‥
まさかの展開ですごく面白かったです
「にんまり」という笑顔の表現は良いイメージにならないので、語り手さんも何かしらの違和感は感じていたのかもしれませんね‥
こ、これは恐い…ガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル
ぬ~べ~!?
ためはち
オチがコワイです
百目
どちらに転ぶかというオチまでの流れ、引き込まれて想像してしまう。めちゃくちゃ上手です。最高
怖すぎる。
一人暮らしなんだけどパキっとか音がしただけでビクビクしてまうがな。
嫌だなぁ