オバケの紙
投稿者:有野優樹 (6)
小学生の頃、祖父母の家に行ったときに“オバケの紙”を見てしまったお話です。
ぼくの実家は二世帯住宅で二階にぼくらの家族、一階に祖父母が住んでいました。
ある日のこと。
雨が降っていて外に行けなかったので、祖父母と遊ぼうと思い一階へ行きました。家の中に一階へ下れる階段があり、5秒もあれば降り切れる長さです。階段を降りている最中にリビングからテレビの音が聞こえてくる‥のが、いつもの音。
でも、この日は聞こえてきませんでした。
「あれ?いないのかな?」
二人の会話、テレビの音、車の音。少し怖さを感じるくらいに静か。音がしないということは留守。行き慣れているはずの一階からは、ひとけを感じられませんでした。
階段を降り切った後、誰もいないならと引き返そうとした時、左側の手すりに紙がくっついているのが見えました。
「?」
こんなところに紙が張り付いているのもおかしな話なんですが、なんだろうと思い剥がしてみると、A4サイズくらいの紙には、オバケの絵が描かれていました。アニメや漫画で出てくるような典型的なオバケの絵。
手をうらめしやの形にして、足元がシュッとなっているアレ。目は黄色一色で吊り上がっていて、こちらを見ています。
「こわっ!!!」
紙をその場に放り投げて急いで二階にかけあがりました。いつも以上にドタバタと二階に駆け上がってきたぼくを見て
「どうしたの?」
と声をかける母親。
祖父母がいなかったこと、オバケの紙を見たこと、全部説明しました。しかし、言葉が拙かったので「どういうこと?」というリアクションをされてしまう。
不気味さをうまく説明できなかったので、見せた方が早いと考え母親を一階へ連れて行きました。一人ではないので強気の足取り。
しかし、一階の景色はほんの数秒前に体験したばかりにもかかわらずさっきとは違っていました。いえ、今の方が正しい状態なので違わなくはないんです。でも違う。
「え!?だからさっきオバケの紙があって、誰もいなくてさ!!!」
‥リビングから、声が聞こえてくる。
2人の会話、テレビの声。
「いるじゃん。2人とも」
恐る恐るリビングに向かうと、祖父母はテレビを見ていました。
「どうしたの?」
起きたことを同じように説明する。
「おじいちゃんもおばあちゃんもずっと居たよ?どこにもおでかけしてないよ?」
たしかに誰も居なかった。
なんの音も聞こえなかった。
仮に2人がいたとしてもオバケの紙は放り投げたんですから、階段の近くに落ちてるはずです。オバケの紙があったなんて説明しても誰も理解できません。オバケの紙しか言わない(言えない)ので、変なのを見て怖かったねーで終わってしまいました。
今になってもオバケの紙を見た、としか言えません。思いかえしてみれば、子供向けの絵本に出てくる可愛らしいオバケの絵でしたが、当時はすごく怖かったんです。
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