納屋の臍の緒
投稿者:with (43)
俺は夏休みは決まって両親に爺ちゃん家に連れていってもらってて、タイミングをあわせて訪れていた従兄弟のEとよく遊んでいた。
そんな夏休み、小学生の俺達が母屋から離れた木造の納屋を秘密基地にして使っていた時の話。
一度納屋で遊んでるところを見つかって従兄弟と一緒に怒られた事があって、その時は爺ちゃんから「古くなってて崩れても危ないから入るな」と注意されてたんだけど、やっぱり秘密基地ぽい雰囲気が気に入って隠れて忍び込んでた。
庭仕事の機材やら普段使いの道具やら何やらが一式置いてあったけど、ある時、手造り感満載の板掛けの棚の上段に綺麗な和柄が細工された重箱のような箱を見つけた。
「これなんだろ」
「開けてみる?」
俺が箱を手にとって作業台に置くとEが箱の蓋に手をかける。
思いの外簡単に外れた蓋をどかして中を覗いてみると、内容量の8割方が綿で敷き詰められていて、その中心に大事そうに臍の緒が置いてあった。
「ううぇ、なんだこれ」
「臍の緒じゃない?」
Eは一見で分からなかったらしいが、俺は昔母に見せてもらったことがあるので何となくすぐに連想できた。
その時は爺ちゃんの家系の誰かのだろうなと思ったけど、何でこんなところにと疑問の方が強かった。
Eは興味が失せたのか箱に蓋を戻して手で俺の方へ押し寄せる。
その時、ガタッと納屋の中で物音が鳴った。
俺達は、爺ちゃんが来たかもと思い、ちょうど子供二人は入れるだろう足元の戸棚に隠れて扉を閉めた。
その後、トタッ、ズズ、とかなりゆっくりな感覚で音が聞こえるのだが納屋の引戸が開く気配はない。
俺とEは互いに顔を見合わせて不思議そうに目を丸くしている。
そして、ゆっくりだが音が近づいてるのが分かると再び意識を向けた。
トタッ、ズズ。
トタッ、ズズ。
その奇妙な音は素足で床を歩く音と、布を引き摺ったような音。
昼間だが納屋の中に日差しはあまり届かないので薄暗い視界が次第に俺達を不安にさせる。
あああ…ああ…
すると、まるで発情期の猫の鳴き声が聞こえる。
あああ…あああ…あああ
その声が俺達の耳元まで近づいてきた所で、Eは「うわあああ」と雄叫びを上げながら扉を開けて戸棚から飛び出した。
「あれ、誰もいないじゃん」
Eの言葉にホッとした俺が戸棚の縁に手をかけて出ようとした時、嫌な視線を感じたので横に視線を移す。
「わああああ!」
そこには、暗闇の中にぼんやりと浮かぶ赤ん坊の顔があり、ニタリと微笑むようにして俺を見ていた。
昔はへその緒を保管してる家多かったみたいだけど最近はどうなんだろ
亡くなった赤ちゃんのものだったのかな?