秘密基地の笑い声
投稿者:with (43)
俺は中学生の友達と一緒に近所の山の中で秘密基地をつくって遊んでいた。
俺の地元は山に囲まれた盆地で、実家から歩いて30分くらいの住宅地から少し離れた山の麓から登っていくと、何十年も使われてない寂れた物小屋がある。
その小屋を勝手に秘密基地に認定し、掃除して小物を置いて快適な空間に改造してた。
秘密基地で遊ぶ面子は、俺とAとBとCの四人で、部活もせずにダラダラ過ごす俺たちにとってここは楽園だった。
ある日、いつも通り放課後に四人で集まって漫画を読んだりスマホゲームをしたりしてまったりと過ごしていると、どこからか人の声が微かに聞こえてくる。
「何か聞こえん?」
「もしかして、小屋の持ち主やない?」
Bの言葉にAが持ち主がやってきたなんて言うもんだから、俺達は一様に慌てて散らかったゴミを片付け始める。
正直、今更片付けても手遅れだし、ここでたむろしてたことは現状を見ればすぐにわかることで、俺達は叱られる覚悟で黙って声が近づくのを待つことにした。
「……来んくね?」
Cがしびれを切らした。
5分くらい経過しても誰も小屋にやってこないので、Aが締め切っていた厚手のカーテンの隙間から外を確認する。
「誰もおらんよ」
俺達は安堵してそれぞれ背伸びをして体をほぐし、緊迫した空気はあっという間に崩れた。
「通りすがりか?こんなとこに人来るんやな」
「つか、ホンマに人の声聞こえたんか?気のせいやろ」
Aの言葉の後にCが疑問を投げ掛けた。
どうやらCは声を聞いていないらしい。
聞いていたのは俺とBだけで、AとCは俺たち二人をビビりといじってきた。
翌日も秘密基地でゲームをしていると、今度は窓ガラスをコンコンと二回叩かれたので、Bがめんどくさそうにカーテンの隙間から外を確かめる。
しかし、Bはすぐさま膝からしゃがみ込んで身を屈め、カーテンの隙間を埋めるように強く握るので俺達三人は怪訝な顔を見合わせてBに声をかけた。
「誰かおったんか?」
「もしかしてマジで持ち主来た?」
AとCが再び緊張した面持ちでゲームを投げ出して起き上がる。
だが俺にはとてもそういう雰囲気には思えなかった。
Bは度胸がある方で、遊園地のアトラクションも平気だし、何度か喧嘩で勝つ程には恰幅もよく、何より深夜でも平気で肝試しに行くほどに神経が太い。
そんなBがたかだか小屋の無断使用で怒られる事でこんなに怯えるだろうか。
「B、外に人おるん?」
俺が問いかけると間を置いてBが何でもないと起き上がり、
「悪い悪い、一瞬、カラスが目の前まで飛んできおってビビっただけや」
こえーよ・・・
怖かった
なんでBと共有しないんだよ.. 余計怖いじゃん…