それから夜も更けてきたし、今まで充分喋って話題も尽きてきたから俺は帰ることにした。
けどタクシーの車内、それから家に帰り着いても今さっき聞いた沖本の話と本人の様子がどうしても頭にこびりついて離れなかった。
やっぱりあの話は全部俺をからかう為のでっちあげだったのか?
いや、あの感じからするとそうとは思えない。田端登の顔もあいつには見えているんだろう。ということは・・・?
どこまでが嘘で本当か、考えれば考えるほどこんがらがって埒があかず、むしろこれ以上触れてはいけない気がして俺は意識的にこの件は深く考えまいとした。
しかしやっぱり気になる物は気になる。日々の生活の中で暇さえあれば沖本の話を反芻している自分がいる。
あれから何か進展はなかったかも含めてもう一度直に話を聞きたく、沖本をまた飲みに誘おうと考えていた、その矢先。
沖本が他界したという報せが入ってきた。
人づてに聞いたところによれば、車が何台も走る道路へと歩道橋から転落したとのこと。
真っ昼間の時間帯で、事故かそうでないかは不明らしい。
つい先日一緒に飲んでた相手がもうこの世にいないなんて、あまりに唐突すぎてにわかには受け入れられなかった。
葬儀にはあいつの家族の他に大学の旧友達や職場の同僚の人達も参列していて式は滞りなく進行し、出棺まで見届けて終了した・・・のだが。
その日の夜、俺は妙な夢を見ることになる。
俺は夕暮れの知らない町を一人で歩いている。すると背後から声をかけられた。
振り向くと沖本が立っているがその姿は尋常じゃ無い。
頭部がグシャグシャに陥没して中身が飛び出し、流れ出る血が顔や身体を真っ赤に染めている。なのにあいつは満面の笑顔で、陽気な声で話しかけてきた。
「よお!俺ぜーんぶ思い出したわ!確かに田端は同じクラスメイトで毎日ボコボコにしてやってたわ!いやー因果応報ってあるんだな。おかげで俺はこのザマ!ハハハハハハ!人生これからって時だったのになぁ!お前も気をつけろよ!」
大声で捲し立てるように言うと血塗れの沖本はどこかへ歩き去って行き、俺はそこで目が覚めた。
夢にあいつが出てきたのはそれで最後だった。
沖本という当事者がこの世からいなくなった以上、もはやどうしようもなく諦めるしかない。考えるだけムダってものだ。
結局この田端登の件は何一つ解決することなく、ただひたすら不気味で理不尽な痛ましい思い出として、あれから10年以上経った今も俺の記憶に深く刻まれることとなった。
とはいえ沖本はちゃんと成仏したのか、せめてそれだけは知りたいと切に思う。


























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