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呪い・祟り

Mineさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

踏切の花嫁
長編 2026/04/30 21:52 64view

今日も契約が取れなかった事を上司に詰られた俺は足取り重く、10時前の夜道を一人暮らしの自宅アパートへと向かっていた。
この地域に飛ばされて1ヶ月あまりのこと。
別に好きでやっている仕事じゃ無い。
営業に向いてないというのは自分でもよく分かっている。けど転職しようにも年齢が年齢だし、これといったスキルもないから今の会社にしがみつくしかないわけだ。
溜息をつきながら人通りの少ない帰宅ルートを進んでいくとやがていつもの踏切が見えてきた。踏切の中央に何か白っぽい物が見える。更に10m程近づいた所でようやくその正体が判明した。
真っ白なウェディングドレスを着た女性が踏切に悄然と佇んでいた。
うつむき加減でベールに隠れて顔は見えない。胸元には両手で掲げ持った花束がある。
この場違いな光景に「何かの撮影か?」と辺りを見回すもカメラクルーらしき姿はどこにも見当たらない。こんな場所でウェディングフォトもないだろう。
俺の他にもう一人通行人がいたがそいつは気付いている様子も無くぼんやりと踏切を渡り、花嫁衣装の女の横を何の関心も示さず素通りしていく。
異常者の類いだろうがあのままあそこにいたら危ないのでは、
と声をかけようか迷っている時。
スゥ、と俺の目の前で煙のように女は姿を消した。
・・・うわぁ、ついにヤバいもん見ちゃったよ俺。勘弁してくれよ。

翌日。
その日も残業で帰りが遅くなり寂しい夜道を自宅へと歩いて、途中にある例の踏切に辿り着いた。やはりいる。
昨日と全く同じ、ブーケを胸に抱いた純白のウェディングドレスの女。
少し離れた位置で戦々恐々としばらく様子を見ていると変化が起きた。
女がゆっくりと顔を上げてきたのだ。
目が釘付けになって離せない。
そしてはっきりとその顔が露わになった時、思わず俺は女の元へと駆けだしていった。
見間違うわけが無い。アレは、アレは。
「サキ!」俺は叫んだ。

小学生の頃から一緒だった。
勇気を出して告白して両思いになったのが16の時。
同じ大学に進み、卒業したら結婚しようと約束していた。
でも現実は容赦なくてサキは難病に侵され、25の時にこの世を去った。

どれだけ俺は世を呪い、涙が涸れ果てるまで泣き尽くしただろう。
ついぞ着ることの叶わなかったウェディングドレス。

その姿のサキが今、俺に優しく微笑みかけている。
ほんの少し手を伸ばせば触れられる距離まで来た時だった。
「あぶない!」
後ろから何者かに羽交い締めにされ地面に勢いよく倒れ込んだ。
ほぼ同時に、地面を揺らす金属的な轟音と共に電車が俺のすぐ鼻の先を駆け抜けていった。
気付けば辺りには警報が鳴り響いている。
電車が走り去った踏切にはサキの姿はもうなかった。
「いやぁ間一髪でした。怪我は無いですか?」
振り向くと50がらみの中年の男がへたり込んでいる俺を見下ろしていた。
「サキが・・・サキがいたから・・・」
この期に及んでも俺はまだそんなことを口走っていたと思う。
「しっかりして下さい!アレはサキさんじゃありません!全くの別物なんです!」
そう怒鳴ると杉山と名乗った男はこの踏切の(曰く)を説明し始めた。

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