すると男性は、少し間を置いてから答えた。
「赤い家か……。あそこは有名だよ。
カーテンや家具はそのままだけど、誰も住んでない。霊が出るんだよ」
母が聞き返す。
「霊が……?」
男性は続けた。
「霊が家を移ってくるんだよ」
「え? 霊が移るんですか?」
「……まあ、近づかない方がいい。気にしない方がいいよ。せっかく引っ越してきたんだから」
そう言うと、男性は母が手渡したお茶菓子に礼を言い、家の中へ戻っていったという。
その話を聞いた弟は、興奮したように身振り手振りを交えながら言った。
「ほら! やっぱり何かあるんだよ!
俺、すげぇ嫌な感じするもん!」
「分かった、分かった。今度、私とお母さんで見てくるよ」
そう弟を宥め、その日はそれで終わった。
それからしばらくして、赤い家のことは私たちの中でも次第に忘れられていった。
そんなある日、急いで帰宅しなければならなくなり、私はタクシーに乗った。
我が家は最寄り駅からバスに乗らなければ帰れない、少し辺鄙な場所にあった。
「家までお願いします。○○です」
住所を伝えると、男性の運転手は明るい声で言った。
「ああ! 赤い屋根の家の近くだね!」
私は思わず聞き返した。
「え? 知ってるんですか?」
「知ってるよ! そりゃあ有名だよ。タクシー仲間も何人も見てるよ。夜はあそこ、通りたくないねえ」
その話を聞き、家に帰ってから母に伝えた。
「え? そんなに有名なの!?」
母も驚いていた。
もちろん、私も同じだった。
ただ、引っ越してきたばかりということもあり、それ以上近所の人に聞くのは少し気が引けた。
そのまま月日は流れていった。
























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