俺は料理が得意な女の子が苦手だ。
普通は逆って思われるかもしれないけど、ちょっと聞いて欲しい。
少し前、俺には彼女がいたんだ。
かわいくて、明るくて、気が利いて――料理が上手い。
俺にはもったいないくらいの、最高の彼女だと思っていたよ。
ある日、彼女が手作りのレアチーズケーキを出してくれたんだ。宅飲みをしてる時に。
酒にレアチーズケーキっておかしいと思ったから、彼女に伝えたんだ。
でも彼女は「お酒に合うように作ったから大丈夫だよ。ちょっと緩くなっちゃったけど」って笑ってた。
その時の俺は彼女のことを愛していたし、信用もしていた。だから、その言葉を信じて食べたんだよ。
そしたら、草木のような香りとレモンみたいな酸味を感じて、最後にブルーチーズみたいな感じの強めの塩味を感じた。
感想を聞かれたからさ「ちょっと癖はあるけど、美味しい」って答えたんだよね。彼女も喜んでた。
彼女も自分で食べて「味が心配だったけど、思ったより美味しくできてる」なんて喜んでた。
でさ、その時にケーキの中で何かが動いた気がしたんだよ。
酔ってたから見間違いかと思ったんだけど――ウジ虫が動いてた。
彼女に「ウジ虫が入ってる! 食べないで!」って伝えたんだけど、彼女は「カース・マルツゥっぽいものを自作したんだよ」って笑ってた。
知ってるかな? ウジ虫で作るチーズなんだけどさ。
彼女はお目当てのウジ虫を探すために採取と試作を繰り返してたらしい。
これだけでも気持ち悪かったんだけど、ヨーグルトも自作してたんだよ。
ヨーグルトくらい――って思うだろ?
アリのヨーグルトだったんだよ。どっかの国で昔作られてたやつらしい。去年の論文がどうこう言ってたけど、それどころじゃなかった。
俺は「酔いすぎた」とか適当なことを言ってその日は寝た。
翌朝も「二日酔いで頭が痛い」って言って帰ってもらおうと思ったけど、世話焼きの彼女は夕方くらいまで看病してくれた。
彼女が帰ってから、すぐに逃げるように引っ越した。
彼女にはメールで別れを告げた。
『話し合えよ』って思うやつもいると思うけど、話し合っても解決しないんだよ。
だって、彼女はただの珍しい食材としか思ってないんだから。
俺が気づいてないだけで、他にも何か入れられてたかもしれないんだぞ。
アーモンドだと思っていたものとか、粉砂糖だと思っていたものとか。
俺には無理だった。だから逃げたんだ。

























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