奇々怪々 お知らせ

ヒトコワ

どこかで見た話さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

地下室の隠し部屋
短編 2025/03/08 00:13 1,502view

大学生の健太は、破格の値段で古びた一軒家を借りた。古いが広く、特に問題はない。ただ、一つだけ妙なことがあった。

それは、地下室の奥の小さな扉。

板で雑に塞がれたその扉について、大家に尋ねたことがある。しかし、彼は言葉を濁し、こう言っただけだった。

「あそこは開けないほうがいい」

しかし、人間というのは不思議なもので、「開けるな」と言われると余計に気になるものだ。

ある夜、酒に酔った勢いで、健太はその扉の木の板を外した。錆びた蝶番が軋み、扉がゆっくりと開く。

中から、腐臭の混じった湿った空気が流れ出してきた。懐中電灯で照らすと、そこは異様な空間だった。

床にはボロボロのマットレスが敷かれ、壁には無数の爪痕が刻まれている。

「……何だよ、これ……?」

震えながら懐中電灯を向けると、床に一冊の古びたノートが落ちていた。

表紙には手垢がつき、ボロボロに擦り切れている。ページをめくると、震える字でこう書かれていた。

「ここから出してくれ。あいつが来る前に……」

読んだ瞬間、背後で**ギィ……**と音がした。

振り向くと、地下室の入り口は開けたままのはずなのに、何かがこちらを見ている気配がする。

「……誰かいるのか?」

懐中電灯を再び小部屋の奥へ向けると、暗闇の中で何かが動いた。

四つん這いの人影。

痩せ細り、髪は伸び放題、爪が異常に長い。青白い肌に、ギラつく目。そいつは、じっと健太を見つめていた。

「……見つけた」

歪んだ口元がゆっくりと開き、不気味な声が漏れる。

健太は本能的に逃げようとした。しかし、足がすくんで動かない。

その時、影が一歩、また一歩と這うように近づいてきた。

「お前、誰だ……?!」

すると、影は苦しそうに喉を鳴らしながら、しわがれた声を絞り出した。

「……俺は……この家の……本当の……持ち主……」

健太の背筋が凍った。

ノートのページをめくると、新たな文字が目に飛び込んできた。

「今の大家は……偽物だ。そいつは俺の姿を奪い、ここに閉じ込めた……」

「……っ!!」

突然、地下室の入り口の扉が**バタン!**と閉まった。

1/2
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。