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ヒトコワ

どこかで見た話さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

笑う男
短編 2025/03/02 11:39 5,057view
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会社帰りの電車。時刻は23時過ぎ。

夜も遅く、乗客はまばらだった。俺はいつものようにスマホを眺めながら、ぼんやりと帰宅時間を過ごしていた。

ふと顔を上げると、向かいの座席に一人の男が座っていた。

にこり、と笑っている。

悪い笑顔ではない。だが、その表情は奇妙だった。何かを企んでいるような、いや、それ以上に「人間らしさ」がない。目を見開き、歯をむき出しにして、ただ笑っている。

気持ち悪い。

そう思いながら、スマホに視線を戻す。しかし、どうしても意識の端にこびりついて離れない。再び顔を上げると、やはり男は笑っていた。

瞬きもせず、微動だにせず。

電車が駅に停まり、何人かが乗り降りする。視線を感じなくなったのでほっとして顔を上げると、男の姿は消えていた。

――いや、違う。

車両の端、ドアの近くに立ち、こちらをじっと見ていた。

まだ笑っている。

ぞわり、と背筋が冷える。なぜ移動した? なぜこっちを見ている? 偶然じゃない。俺に興味を持っている。

次の駅で降りよう。

電車が停まると同時に立ち上がり、すぐにホームに足を踏み出した。ドアが閉まり、電車は走り去る。

「……気のせいか?」

安堵した。が、家までの帰り道、ずっと視線を感じていた。振り返る勇気はない。

部屋に入り、すぐに鍵をかける。

気のせいだ、そうに違いない。風呂に入り、布団に潜り込んだ。仕事の疲れもあってすぐに眠れそうだった。

――だが、夜中にふと目が覚めた。

何かの音がした気がする。

カリ……カリ……

どこからか、何かを削るような音がする。

耳を澄ませる。

カリ……カリ……

……玄関のほうだ。

何かが、俺の部屋のドアを引っ掻いている。

ぞっとして、布団の中で息を潜める。

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コメント(3)
  • こわあああああ、、、

    2025/03/05/17:40
  • おもしろかったです!

    2025/03/06/13:26
  • こわすぎwww

    2025/03/11/17:35

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