会社帰りの電車。時刻は23時過ぎ。
夜も遅く、乗客はまばらだった。俺はいつものようにスマホを眺めながら、ぼんやりと帰宅時間を過ごしていた。
ふと顔を上げると、向かいの座席に一人の男が座っていた。
にこり、と笑っている。
悪い笑顔ではない。だが、その表情は奇妙だった。何かを企んでいるような、いや、それ以上に「人間らしさ」がない。目を見開き、歯をむき出しにして、ただ笑っている。
気持ち悪い。
そう思いながら、スマホに視線を戻す。しかし、どうしても意識の端にこびりついて離れない。再び顔を上げると、やはり男は笑っていた。
瞬きもせず、微動だにせず。
電車が駅に停まり、何人かが乗り降りする。視線を感じなくなったのでほっとして顔を上げると、男の姿は消えていた。
――いや、違う。
車両の端、ドアの近くに立ち、こちらをじっと見ていた。
まだ笑っている。
ぞわり、と背筋が冷える。なぜ移動した? なぜこっちを見ている? 偶然じゃない。俺に興味を持っている。
次の駅で降りよう。
電車が停まると同時に立ち上がり、すぐにホームに足を踏み出した。ドアが閉まり、電車は走り去る。
「……気のせいか?」
安堵した。が、家までの帰り道、ずっと視線を感じていた。振り返る勇気はない。
部屋に入り、すぐに鍵をかける。
気のせいだ、そうに違いない。風呂に入り、布団に潜り込んだ。仕事の疲れもあってすぐに眠れそうだった。
――だが、夜中にふと目が覚めた。
何かの音がした気がする。
カリ……カリ……
どこからか、何かを削るような音がする。
耳を澄ませる。
カリ……カリ……
……玄関のほうだ。
何かが、俺の部屋のドアを引っ掻いている。
ぞっとして、布団の中で息を潜める。
こわあああああ、、、
おもしろかったです!
こわすぎwww