奇々怪々 お知らせ

不思議体験

どこかで見た話さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

204号室
短編 2025/03/01 18:14 1,306view
1

達也と俺は、204号室の前に立っていた。管理人が言うには、しばらく誰も住んでいないはずなのに、夜な夜なノックの音がするとか。

「開けるぞ」
達也がドアノブを回し、扉を押し開く。

埃っぽい空気が流れ出し、室内はどことなく湿っていた。家具もなく、ただがらんとした部屋。しかし、床には何かが落ちている。

「……メモ?」

達也は部屋の入り口に立ったまま様子を窺っている。俺はふと、そのメモに目を落とした。

【この部屋では、読んではいけない】

胸がざわつく。

「おい、なんかあったか?」
達也が尋ねる。

「いや……ただの紙切れだ」
そう言いながら、俺はメモをめくった。

【読んだら、もう戻れない】

何かが背後に立っているような気がした。振り返るが、達也はまだドアの向こうにいる。

【あなたは今、独りじゃない】

瞬間、全ての音が消えた。

「おい、なんか言ったか?」
達也の声が遠い。

目を上げると、部屋の様子が僅かに変わっている。さっきまで開いていたドアが、今は少しだけ閉まっているように見える。

嫌な予感がする。完全に閉まったら、もう二度と出られない——そんな確信が頭をよぎる。

「達也……?」

俺は咄嗟にドアへ駆け寄る。しかし、足が異様に重い。何かに引っ張られている?

「おい、なんで黙ってんだよ!」
達也の声がする。ドアは、開いているのに。

俺は、確かにここにいるのに。

メモの最後の一文に気づく。

【この部屋では、ノックの音が聞こえたら、もう遅い】

読んだ瞬間、理解した。

夜な夜な204号室からノックの音が聞こえていたのは、閉じ込められた誰かが助けを求めていたからだ。

でも、それに気づいたときにはもう遅い。

1/2
関連タグ: #事故物件#声#家具
コメント(1)
  • 「204号室」ってなんか不吉な感じの部屋番号って考える人も居るからかホラードラマ「いちばん暗いのは夜明け前」 の舞台として使われた。 処分されたらしく近所のレンタル屋にはもう置いてなくてもはや「幻のドラマ」と化したのも怖い

    2025/03/01/20:37

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。