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ヒトコワ

鬼笑いの語り部さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

帰れない家
短編 2025/04/03 11:21 738view
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それは、僕がまだ小学生だった頃の話だ。

両親と僕、そして妹の5人家族で、郊外にある築50年の一軒家に引っ越した。庭付きの大きな家で、子供の頃の僕は大喜びした。しかし、その喜びは長くは続かなかった。

引っ越して数日後から、家の中で奇妙なことが起こり始めた。夜中に誰もいないはずの二階から足音が聞こえたり、誰もいないはずの部屋から話し声が聞こえたりするようになった。最初は気のせいだと思っていた両親も、次第に顔色が悪くなっていった。

ある晩、妹が突然泣き出した。「誰かが私の名前を呼んでいる」と震えながら言う妹を、母は必死に抱きしめていた。その時、僕も確かに聞いたのだ。女の人の声で、妹の名前を呼ぶ声を。

それからというもの、毎晩のように奇妙なことが起こるようになった。足音や話し声だけではなく、誰もいないはずの部屋のドアが勝手に開いたり、物が宙に浮いたりするようになった。家族全員が疲弊しきっていた。

ある日、父が古い新聞記事を見つけた。それは、僕たちが引っ越してきた家にまつわる記事だった。記事によると、その家では過去に一家心中事件があったという。母親が子供二人を殺害し、自分も命を絶ったのだ。

記事を読んだ父は、青ざめた顔で言った。「この家には、まだ彼女たちの霊が残っているのかもしれない」

その日から、僕たちは家に帰るのが怖くなった。しかし、他に引っ越すあてもなく、ただただ恐怖に耐えるしかなかった。

ある夜、ついに恐れていたことが起こった。妹が突然、「お母さん」と叫び、そのまま意識を失ってしまったのだ。救急車を呼び、病院に運んだが、原因は分からなかった。

妹が倒れてから、家の中の異変はさらに酷くなった。壁に黒いシミが浮かび上がったり、天井から水滴が落ちてきたりするようになった。そして、毎晩のように、あの女の人の声が聞こえるようになった。「帰ってきて」と。

僕たちは、もう限界だった。家を出ようとしたその時、玄関のドアが勝手に閉まり、鍵がかかってしまった。窓も全て閉まっていて、開かない。

その時、家の奥からあの女の人が現れた。顔は真っ黒で、目は血走っていた。女の人は、僕たちに向かってゆっくりと手を伸ばしてきた。

その後のことは、よく覚えていない。気がつくと、僕たちは病院のベッドにいた。両親は、あの後すぐに引っ越しを決めたらしい。

あれから数年経つが、あの家のことは今でも夢に見る。あの女の人の声が、今でも耳に残っている。

この物語はフィクションです

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