亡くなった後も、魂はこのシェルターから出ることができず、彼は今までずっとこの中に閉じ込められていたらしい。どうやら核シェルターは放射能の他に霊魂も通さないようだ。
「こんな醜くなった姿をマリーに見られたくない。武士の情けだ・・・」
なるほど、そういう彼の言い分はよくわかる。
その時、ミイラの傍らに封書の束のようなものを見つけ、ボクはハッとした。
それらは赤い紐でぐるぐる巻きにされていたのだ。マリーさんの体のように。
それを見つけて手にした時、彼が恥ずかしそうに言い訳をしだした。
「あぁ、それはその・・・笑わないでくれよ。戦場にいる時にマリーが日本から送ってくれた手紙なんだ。つまり、その・・・ラブレターだ。私の宝物だ」
彼がいいやつだってことが一気に伝わって来た。
生きるか死ぬかの避難に使う核シェルターの中に、昔のラブレターを持ち込む奴が、悪いやつの訳がない。そして、これこそがマリーさんの魂をここに縛り付けていたものの正体だったのだ。お互いの思いが強すぎた・・・という事なのかもしれない。
ボクは言った。
「どうですか。今夜みなさんで天国に登るっていうのは」
彼はその提案に喜んでいるようだった。
「やっとここから解放される!」
「それじゃ、マリーさんの屋根裏部屋に全員集合といきましょうか」
・・・そうだ、あの男も必要だ。・・・あんまり呼びたくないけど・・・。
ボクは以前もらった名刺を見ながら、除霊師の男に電話をした。
「あっ、お久しぶりです旦那さん~ニンニンです!ガハハ、なんつって」
(やっぱやめようかな、コイツ・・・) (-_-)
彼は1時間もあれば駆け付けられるという。
さて、ミイラの件は一旦伏せて、ボクらは屋根裏部屋へと向かった。
もう日が暮れ始めている。「逢魔が時」だ。
屋根裏部屋についたボクらは、小さなテーブルをはさんで立ち、浜辺マリとその友人、平原リリの霊を呼び寄せた。テーブルにはあのラブレターの束が置いてある。
果たして現れた二人は・・・感極まって、もう何も言えない。
マリーさんはもうすでに泣いており、何も言わずに彼の胸に飛び込んで行った。
あのクールだった平原リリも目を真っ赤にして、やっと声を絞り出す。
「もう6年も行方不明だと思ってたのに、こんなに近くにいたなんてね」
彼がボクに礼を言う「ありがとう、キミのおかげだ」
マリーさんも言う「あなたって、本当にいい人なのね」
平原リリがテーブルの上の封書の束に目をやる「これがマリーを縛り付けているんだね」
























kanaです。
この作品は2022年の春頃に書いたマリーさんシリーズの4編をまとめて、加筆修正してまとめた完全版として書き上げたものです。長編18ページとなりましたが、面白く読めると思いますので、ぜひお読みください。後半に出てくるニンニンこと、除霊師・忍足 忍(オシダリ シノブ)は、朽屋瑠子シリーズの「赤騎士事件」にも朽屋の同僚として登場する除霊師です。スピンオフ参加です。お楽しみください。
読んでいる途中で感情移入をしたようで、涙が止まりませんでした。
良い話や
すごい感動しました?
最高です!
※勲章授与のシーンで脱字がありましたので修正しました。
kanaです。
劇中歌として『ホームにて』と『時はながれて』をマリーさんが歌っていますので、
よろしければそれを聞きながら読んでいただくと、臨場感も湧くと思います。
ちなみに、検索をかけると『時はながれて』と同名のタイトルの楽曲を複数の方が歌われているようで、もしかしたら違う曲を聴く可能性もありますが(笑)、マリーさんが歌っているのはあくまでも「某有名女性フォークシンガー」が歌われている曲です。失恋の歌が多い方ですよね。
では、お楽しみください。
↑↑感動したというコメントをいただいて大変ありがたいです。あと、怖くないのにこわいねボタン押してくださる方、ありがとうございます。
みなさんはどのシーンでほろりと来ましたか?
怖いの苦手な方も、ぜひお楽しみください。
さすがです。
本を買ってみたい
ダメだ、会社の休み時間に読もうとしたけど、読んだら会社で泣きそうになった。これは帰ってからじっくり読ませてもらいます。あぶない
とてもいい話で感動しました。これからもがんばってください。
感動した
感動した。
素晴らしい話しで読ませて頂きました。ありがとうございます
感動
kanaです。皆様コメントありがとうございます。最近Youtubeでも朗読してくれる方が複数おり、大変感謝しています。だってこんなに長いのに。一度朗読したら1時間はかかると思う。自分で朗読すればわかるけど、これってすごい労力ですよね。ありがたいです。
そして正直言うと、このマリーさんのお話は自分的には集大成な気がするので、これを書けたらもう怪談は引退してもいいかな~ぐらいに思ってた作品なので、読まれるとなおさらうれしいですね。
後、どこかのコメントで「テレビドラマ化してほしい」なんてお言葉もいただきました。
それ、できたらスゴイですよねぇ~。夢です。奇々怪々さんの運営でテレビ局にかけあってくれないかなぁ~。テレビ番組で「奇々怪々」、いいよねぇ~。・・・舞台でもいいなぁ~どこかにこれやりたい劇団はいませんか~~?
幽霊めっちゃいいやつ」