マリーさんが恥ずかしそうに言う
「だって、これって・・・私が一生懸命英語辞書を見ながら書いた手紙・・・全部戦場に置いてきたって言ってたじゃない!」
「実は全部取っておいたんだ。私の唯一の心の拠り所、生きる望みだったのに、捨てられるわけがない。・・・でも言ったら恥ずかしいだろ!」
幽霊がイチャツキだした。
そんなやり取りを見ていてボクはなんだか安心した。
これならマリーさんも、天国で寂しくなく暮らせそうだな。
その時、タイミングよくピンポーンと鳴った。彼だ。例の除霊師がやってきたのだ。
ボクは席を外して除霊師を迎えに降りた。
玄関には、相変わらず黒くてデカイ彼がいた。
(この人、この体格で屋根裏部屋まで来れるかな・・・)ちょっと心配になったが、
思いのほか小気味よく動けるようで、ボクについて屋根裏部屋までギシギシ言いながらたどり着いた。
「あ、みなさんお集まりで・・・お邪魔します。ニンニンと呼んでください。なんつって」
「それじゃ、除霊師も到着しましたし、名残惜しいですがそろそろ行きますか」
とボクが言うと・・・
「ちょっと待って!」とマリーさん。
「私たちの為にこんなにしてもらって・・・せめて、お別れに歌って別れたいわ」
「そうね、そうしようか」平原リリもその話に乗った。
どうやら何十年かぶりに【リリー&マリー】再結成らしい。
マリーさんは例のギターを。平原リリも自前のギターを用意して、二人で演奏だ。
ボクと、マリーさんの旦那さん、そしてなぜかニンニンも、部屋の隅に客席を作ってそこに座り、二人の曲を聴くことにした。
「それではお別れにこの曲を・・・『時はながれて』・・・」
静寂の中、ギターの弦がゆっくり鳴き始める。
・・・震えるようなマリーさんの切ない歌声が静かに響き渡る。
リリーのギターがそれに合わせてハーモニーを奏でる。音に厚さが増す。
あぁ・・・なんだかこれまでのいろいろなことが頭に浮かぶ。
客席のボクも、マリーさんの旦那さんも、涙がボロボロ溢れていた。
静かに演奏が終わる。ボクはまた涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら拍手を送った。
「ありがとうございました・・・」
「うっうっ、うぐっ、よかったっす!!」・・・なんで除霊師まで泣いているのだろう。
「じゃあ、今度こそ本当にお別れだね」リリーが言う。
























kanaです。
この作品は2022年の春頃に書いたマリーさんシリーズの4編をまとめて、加筆修正してまとめた完全版として書き上げたものです。長編18ページとなりましたが、面白く読めると思いますので、ぜひお読みください。後半に出てくるニンニンこと、除霊師・忍足 忍(オシダリ シノブ)は、朽屋瑠子シリーズの「赤騎士事件」にも朽屋の同僚として登場する除霊師です。スピンオフ参加です。お楽しみください。
読んでいる途中で感情移入をしたようで、涙が止まりませんでした。
良い話や
すごい感動しました?
最高です!
※勲章授与のシーンで脱字がありましたので修正しました。
kanaです。
劇中歌として『ホームにて』と『時はながれて』をマリーさんが歌っていますので、
よろしければそれを聞きながら読んでいただくと、臨場感も湧くと思います。
ちなみに、検索をかけると『時はながれて』と同名のタイトルの楽曲を複数の方が歌われているようで、もしかしたら違う曲を聴く可能性もありますが(笑)、マリーさんが歌っているのはあくまでも「某有名女性フォークシンガー」が歌われている曲です。失恋の歌が多い方ですよね。
では、お楽しみください。
↑↑感動したというコメントをいただいて大変ありがたいです。あと、怖くないのにこわいねボタン押してくださる方、ありがとうございます。
みなさんはどのシーンでほろりと来ましたか?
怖いの苦手な方も、ぜひお楽しみください。
さすがです。
本を買ってみたい
ダメだ、会社の休み時間に読もうとしたけど、読んだら会社で泣きそうになった。これは帰ってからじっくり読ませてもらいます。あぶない
とてもいい話で感動しました。これからもがんばってください。
感動した
感動した。
素晴らしい話しで読ませて頂きました。ありがとうございます
感動
kanaです。皆様コメントありがとうございます。最近Youtubeでも朗読してくれる方が複数おり、大変感謝しています。だってこんなに長いのに。一度朗読したら1時間はかかると思う。自分で朗読すればわかるけど、これってすごい労力ですよね。ありがたいです。
そして正直言うと、このマリーさんのお話は自分的には集大成な気がするので、これを書けたらもう怪談は引退してもいいかな~ぐらいに思ってた作品なので、読まれるとなおさらうれしいですね。
後、どこかのコメントで「テレビドラマ化してほしい」なんてお言葉もいただきました。
それ、できたらスゴイですよねぇ~。夢です。奇々怪々さんの運営でテレビ局にかけあってくれないかなぁ~。テレビ番組で「奇々怪々」、いいよねぇ~。・・・舞台でもいいなぁ~どこかにこれやりたい劇団はいませんか~~?
幽霊めっちゃいいやつ」