それはクリスマス・イブの夜の事。
「ミオちゃん・・・ミオちゃん・・・」誰かがミオの名前を呼ぶ。
眠い目をこすりながら、ミオは目の前にサンタクロースが立っていることに気が付いた。
「あ・・・サンタさん?」
「メリークリスマス、ミオちゃん。いい子にしてたかな?」
「うん」
「ママの言うことはちゃーんとよく聞いてるかな?」
「うん」
「幼稚園は楽しいかい?」
「うん・・・いじわるな子もいるけど、へいきよ」
「ミオちゃんは強いんだね」
ミオは布団に入りながら、サンタとしばらくの間お話をしていた。
やがてサンタは持ってきた絵本を取り出し、ミオにそれを読み聞かせてあげた。
時々サンタの優しい手がミオの頭をなでる。
ミオは暖かい幸せな気持ちの中で、いつのまにか再び眠りについていた。
・・・・・・・・・・・・
翌朝、目が覚めたミオは、枕元に絵本と、毛糸で編んだかわいい手袋があるのを見つけた。
それを持って急いでベッドルームを飛び出し、キッチンにいたママにそれを見せびらかした。
「サンタさんよ! 昨日サンタさんが来てプレゼントを置いて行ってくれたの!!」
「わ~、かわいい手袋ね。よかったわね」とママは演技をしてみせた。
なぜなら、その手袋はミオには内緒でママが編んだものだったし、絵本もそっと枕元に置いてきたものだったからだ。
「いいでしょ~」ミオは上機嫌となり、幼稚園にもその手袋をはめて行った。
・・・・・・・・・・・・
幼稚園に着くと、園児らの間でちょっとしたクリスマス談議になっていた。
サンタは本当にいるのか、いないのかという論争だ。
ミオはもちろん、昨夜の出来事を語り、サンタは本当にいるんだと言った。
ちょっとおませでいじわるな子は、サンタの真実を大きな声で皆に言った。
「あのねー! サンタさんの正体はね、本当はパパなんだよ!!」
「ええ~~~」と驚く子もいれば、「そんなの知ってるもん」と嘘ぶく子もいた。
そんな中、ミオはその友達の事を見つめながら、やがてポロポロと大粒の涙を流した。
























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