「間違いない、これだ!」
おもむろにスイッチを上げると、どこからともなくモーター音のようなものがして裏庭の隅にある鉄板が開いた。開いたと同時に、鉄板の上に合った棚やプランターなどが持ち上げられ、全部ひっくり返された。すごい力で開閉されるようだ。
もうすぐ全開かと思われたとき、配電盤のスイッチがバチンと音を立てて落ちてしまった。と同時にモーター音が途切れ鉄板が沈み始めた。どうやらスイッチのかみ合わせがゆるく、すぐに戻ってしまうようだった。
ボクはいったん室内に戻り、ガムテープを持ってきてスイッチを上げた状態にして、
テープでガッチリ固定した。モーター音が鳴り、再び鉄板が上がり始めた。
そこから中を覗き込むと、照明がついており、エアコンも稼働をはじめたようだった。
意を決してボクは夢で見たようにラダーを降りてみた。
果たしてそこには・・・ミイラとなった遺体がソファに横たわっていた。
「彼だ・・・マリーさんの旦那さんに違いない」
夢で見たことが本当なら、マリーさんと喧嘩をした彼は、帰りたいけど帰れず、しかたなくこの地下のシェルターのような場所に避難したものの、なんらかの原因で逆にここに閉じ込められて亡くなってしまったのだろう。
ボクは一刻も早くこの事を知らせたく、マリーさんの名を呼ぼうとした。
が、その時、背後に気配を感じた。
「please wait. Don’t bring Marie here(待ってくれ、マリーをここへ連れてこないで)」
彼だ。そこには凛とした顔つきのアメリカ軍将校の青年が立っていた。
彼の言葉を簡単に訳すとこうだ。
「キミにはすまないと思っている。キミが私のシルバースター勲章を触った時に、思いが伝わることがわかって、利用させてもらったんだ」と。
・・・聞いたことがある。その人が愛用したもの、愛着を持ったものなどには、一種の念のようなものが残り、その人の過去の記憶の断片が見えたりすることがあるという。
以前なにかのドラマでそんなようなものを見たことがある気がした。
つまり簡単に言うと、彼は勲章に残っていた残留思念を利用して、ボクに夢を見せることによって、ここまで誘導したと言うことらしい。
彼の話ではここは核シェルターで、家を建てる前から地下に設置して、マリーさんにも秘密にしていたのだとか。 夢で見た通り、老体に鞭打ってラダーを降りたものの、突然電源が消失し、ハッチが締まり始めたため驚いてラダーから落ちてしまい、その時に大腿骨を骨折したのだと言う。
元々腰も悪くしており、動けなくなり、外との連絡もできないままここに閉じ込められ、やがて失意の中、亡くなってしまったとのことだった。























kanaです。
この作品は2022年の春頃に書いたマリーさんシリーズの4編をまとめて、加筆修正してまとめた完全版として書き上げたものです。長編18ページとなりましたが、面白く読めると思いますので、ぜひお読みください。後半に出てくるニンニンこと、除霊師・忍足 忍(オシダリ シノブ)は、朽屋瑠子シリーズの「赤騎士事件」にも朽屋の同僚として登場する除霊師です。スピンオフ参加です。お楽しみください。
読んでいる途中で感情移入をしたようで、涙が止まりませんでした。
良い話や
すごい感動しました?
最高です!
※勲章授与のシーンで脱字がありましたので修正しました。
kanaです。
劇中歌として『ホームにて』と『時はながれて』をマリーさんが歌っていますので、
よろしければそれを聞きながら読んでいただくと、臨場感も湧くと思います。
ちなみに、検索をかけると『時はながれて』と同名のタイトルの楽曲を複数の方が歌われているようで、もしかしたら違う曲を聴く可能性もありますが(笑)、マリーさんが歌っているのはあくまでも「某有名女性フォークシンガー」が歌われている曲です。失恋の歌が多い方ですよね。
では、お楽しみください。
↑↑感動したというコメントをいただいて大変ありがたいです。あと、怖くないのにこわいねボタン押してくださる方、ありがとうございます。
みなさんはどのシーンでほろりと来ましたか?
怖いの苦手な方も、ぜひお楽しみください。
さすがです。
本を買ってみたい
ダメだ、会社の休み時間に読もうとしたけど、読んだら会社で泣きそうになった。これは帰ってからじっくり読ませてもらいます。あぶない
とてもいい話で感動しました。これからもがんばってください。
感動した
感動した。
素晴らしい話しで読ませて頂きました。ありがとうございます
感動
kanaです。皆様コメントありがとうございます。最近Youtubeでも朗読してくれる方が複数おり、大変感謝しています。だってこんなに長いのに。一度朗読したら1時間はかかると思う。自分で朗読すればわかるけど、これってすごい労力ですよね。ありがたいです。
そして正直言うと、このマリーさんのお話は自分的には集大成な気がするので、これを書けたらもう怪談は引退してもいいかな~ぐらいに思ってた作品なので、読まれるとなおさらうれしいですね。
後、どこかのコメントで「テレビドラマ化してほしい」なんてお言葉もいただきました。
それ、できたらスゴイですよねぇ~。夢です。奇々怪々さんの運営でテレビ局にかけあってくれないかなぁ~。テレビ番組で「奇々怪々」、いいよねぇ~。・・・舞台でもいいなぁ~どこかにこれやりたい劇団はいませんか~~?
幽霊めっちゃいいやつ」