まじない奇譚
投稿者:竹倉 (9)
その一瞬の、些細な私の動揺を見たEさんはひとこと。
「お気に入りのボールペンは自宅の机の上にありますよ。長くお努めしているのねぇ。」
と、にこやかに言いました。
当時は分からなかったのですが ‘‘長くお努め’’ というのは、ひとつの物を大切に使い続けるといった意味なのだそうです。
実際そのボールペンは小学生の時から愛用している物で、父が買ってくれている替芯を使用し使い続けているのです。
私はEさんの言葉に理解が追いついておらず、苦笑するのみでした。
その後はつつがなく話もすすみ、Eさん個人の話に焦点が当てられました。
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Eさんは東京麹町の出身とのこと。
お父様は従軍記者。お母様は銀行員をされていたそうです。
父親は厳しい人ではあったけれど、娘二人にはとても優しい。
妹さんはEさんと7歳年が離れていたけれど、おしゃまで可愛かったのだとか。その妹さんは当時はまだご健在だと話していたかと思います。
家族の話、とりわけお母様の話になると目頭を熱くされる様子が多だ見られ、話しを続けることが憚られましたが、ご本人たっての希望にて続行することとなりました。
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「母は和歌山県北部出身のひとでした。父と結婚して東京へ移住して来たのですよ。」
Eさんは懐かしむように語りだしました。
「私の子供時分はまだ大東亜戦争も起きてはいなくてね、それはそれは平和な時代だったのよ。」
「父が持っていたフランク・シナトラのレコードが子供心に大好きだった。『かもめの水兵さん』よりも断然シナトラだったわね。その当時は特高がやってくることもなかったし。」
とても楽しそうに話していました。
特高のくだりでは眉間にシワを寄せ眉をハの字にさせてはいたけれど。
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「…その父に赤紙が来た時の母の事を今でも忘れられないのよ。」
Eさんの話によれば、お父様に召集令状が届く前日の晩のことであったらしい。
当時の習わし通り、テーブルを囲んでお父様が一番に夕飯を召し上がった時を見計らったかのように、お母様がこう話されたらしいのです。
怖い話、というよりも本当に素敵お話、情景描写で引き込まれました。また楽しみにしております。
とても、不思議。
時代背景とか、引き込まれる感じ。
久しぶりに、不思議で素敵な話しでした。
美しい。
とても素敵なお話でした。
わかりやすい話し方で、すぐEさんの世界観に引き込まれました。
唱えている呪文は密教のマントラですね。
真言宗のお寺の家系なのでしょうか。
世界観に引き込まれました。
この手の話はとっても興味あります。
そして見えない世界の大きさも
信じれますね。信じる人は救われます🙏
m.yより
おもすろい。
m.yより
って上のコメントで書いてる人、自分が有名人って勘違いしてておもろい
怖くないけど、好きです。
不思議な話は必ずしも怖いとは限らないのですね。当時中学生の書き手さんの行動力にも感服します。意図せずさわやかな気持ちになれました。
サムハラ?
サムハラ神社てのが岡山にあるな。サンスクリット系の言葉から来てるのかもな
オンマシリソワカとかは真言だからこと不思議でもない。
生まれ月によって守り御本尊があったり、そこ言葉があるし、地蔵様へもあるからよくあること。
気になるなら調べたらいい。
オカルトは知らんが昔の修行者や武術家なら当たり前の世界でもある。
五問銭は死線を越えるっつって四銭より上だから戦中はよくある願掛けだ。
カラス銭だったか。