俺のカミさんには変わった癖がある。
寝ている時、多少の物音では起きないのに俺が顔を見ていると起きてしまうのだ。
「びっくりするからやめて」
と言われるのでカミさんが寝ている時は極力顔を見ないようにしている。
ところが数ヶ月前、俺が寝付けずカミさんに背を向けてスマホを眺めていると、寝ていたカミさんがいきなり起きて
「また顔見てた?」
と言ってきた。見てないと言うと、ふーんと言って寝てしまった。
それからというもの、時々朝カミさんが同じような事があったと言ってくるようになった。
どうも、俺が寝ている寝室の入り口方向から視線を感じ、その方向を見ても何も無いらしい。もっとも、カミさんは眼鏡をしないと1m先もはっきり見えない視力だし、加えて暗い寝室では見えなくて当然だろう。
俺は探偵気取りで正体を突き止めようと一晩中起きている事にした。入り口の扉をじっと見ながら、イヤホンで音楽を聴いて眠気を散らした。
「ひゃ!」
突然、カミさんが悲鳴をあげた。いつの間にか寝ていたらしい俺は急いで振り向いた。カミさんは眼鏡をしていた。視線の正体を見たのだ。
俺はカミさんに何を見たのか聞いた。だが、はっきりしない言葉を残して布団に潜ってしまった。
その日の朝、カミさんは何も言わずに実家に帰ってしまい詳細な事は未だに分からない。
今俺はお祓いに行くべきか迷っている。何故なら、カミさんの最後の言葉がこう聞こえたからだ。
「背中に顔が」
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