私は以前、マンションの9階に住んでいた。
この高さになると、緊急車両のサイレンやバイクの音以外、ほとんど騒音が聞こえなくてとても快適だった。
ある休日、昼に家で本を読んでいると外から男の大きな声が聞こえてきた。
「かなりー! かなりー!」
それは、迷子になった子の名前を呼んで探す時の声の出し方によく似ていた。
だがその男の声は異様に無機質で、感情がないように聞こえて奇妙だった。
きっと酔っ払いか何かだろう。近くに飲み屋街もあるし。
そう思い、あまり気に留めずに本を読んでいたのだが、その男の声は段々と増していった。
「かなりー!!かなりー!!」
かなりちゃんどこにいるんだよ。早く見つけてくれ。
心のなかでそうツッコミつつ読書を進める。
読んでる文章にも「かなり」と出てきて腹が立ってくる。
かれこれ5分くらいそれが続いたので、我慢できなくなってヘッドフォンをかけたら
「いた」
って耳元から。
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