仕事帰り、職場の先輩と居酒屋に行った時に聞いた話だ。
「撮り鉄っているじゃない?」
突然先輩が話し始めた。
「駅のホームとか踏切なんかでカメラを持ってさ、お目当ての列車が来るとバシバシ写真を取りまくってる奴等さ」
「奴等はさ、撮りたい列車のアングルやら風景なんかに並々ならない情熱を注いでいるのか知らんけど、世間一般の印象ってすこぶる最悪だよな」
確かに俺もそれには同意だった。ちょっと非常識な、目に余る行動がテレビなんかでもよく流れできるし。
「駅員を罵倒したり、一般客にまで罵声を浴びせたりさ。あれ完全に常軌を逸してるよね」
「まるでキ◯ガイ。いや、本当にキチ◯イだって」
凄い言いようだな。撮り鉄全てがキチガ◯なわけではないとは思うんだがw
ちゃんとルール守ってる人の方が大半らしいし。
「……でもね、俺が撮り鉄をここまで◯チガイ認定するのにはちょっとばかり理由があってさ。聞いてくれるかな?」
そう言うと先輩はあらためて語りだした。
自分はといえば、ツマミのモツ煮をビールで流し込んでいる。
「俺が学生の頃にもさ、同じクラスにやはり熱心な撮り鉄がいたのさ。
名前はなんていったかな、そうそうMだM」
「少しおかしなやつでさ、ひとりでブツブツ言っていることが多くてさ、自然に周りが距離を取っていった感じなんだ」
「まぁよくいるパターンだよな。
ほら、言っちゃなんだけど、ひとつの事を極めようとする人って、ちょっと病的なところがあるじゃん。変人と天才は紙一重とも言うしさ」
「ある時さ、教室で雑誌を読んでいたMが突然叫び始めてさ、教室中騒然としたもんさ」
何を叫んだんだろう?
「なんでも、自分が発掘した撮影スポットで、見知らぬ誰かが撮った電車の写真が何かの賞をもらったらしいんだわ」
ふ〜ん。それは心中穏やかではないだろうな。なんとなくMという人の気持ちが分からんでもない。
「何だか色々喚いていたな。鉄道愛好家の何たるかをひたすらな。でな、Mのやつどうしたと思う?」
う〜ん…見当がつかん。
先輩にそう伝える。
「飛び込んだのさ。その撮影スポットで。電車に」
サラッとそう言いながら先輩はモツ煮を一切れ口に放り込んだ。
「実はな、俺はその現場の先の駅にたまたまいてさ、駅自体は各駅だったんだけど、電車が急行だったもんだったからさ、急には止まれなかったんだろうな」























本当に狂っているのは、私達なのかも知れませんね…。とても面白かったです!