古戦場の怨念
投稿者:くま (10)
ここ数年のうちにだいぶ開けてきてはいますが、わたしの住む町は山の中の、「ど」がつく田舎です。
古くは水飲み百姓ばかりが住む土地だったそうですが、それでもお城の跡などがあります。古戦場となった場所もあり、そういう場所は今でも奇妙なことが起きているようです。
この田舎町の中の、いくつかある不気味な場所のなかの一つに、関わったことがあります。
わたしは介護福祉士をしています。
少し前まで在籍をしていた特別養護老人ホームは、この町の山のほうにありまして、特に夜など、田んぼ道の暗がりに甲冑を着けた人物が歩いているのを見かけるなど不気味な噂がありました。
その場所は、小さなお城があったそうです。
具体的にどんな戦があったのかは分かりませんが、その特養の職員らが遅番で帰る時に見かける甲冑の幽霊たちは、首がなかったり、背中に矢を受けているなど、凄まじい様子らしいです。
ちなみにわたしは、幽霊の姿は見たことがありませんが、「がしゃんがしゃん」という足音が山に続く小路のほうから近づいて来るのを聞いたことはあります。また、夜勤の時など、施設の中の静まりかえったフロアでパソコンを打っている時に、うっすらと、合戦のときの声のような大勢の人の声を聞いたことがあります。
「聞いてよ、昨日の遅番の帰り、まだ見ちゃってさあ」
「ほーら言わんこっちゃない。だから、駐車場まで行く時は一人じゃだめだって」
昼休みなど、こんな会話が聞かれるのは珍しいことではありませんでした。
もっとも、中には眉唾ものの話もありました。
「昨日の夜さあ、ここでUFO見ちゃった」
「あー、ここ、幽霊だけじゃなくUFOも出るんかー」
UFOの噂も何度か聞いたのですが、流石にそれは信じられませんでした。
在籍中、何度も夜に施設の外の小路を歩いたことがありますが、一度もUFOらしきものを見たことはありません。
ちなみに、あの職場の職員の大半が、甲冑の幽霊に遭遇しています。UFOを見たと主張する人は、ほんの数人くらいだったと思います。
介護の職場には、どこでもそうだと思うのですが、大抵、霊感が強いと自称する職員が何人かいるものです。
あの特養にも霊感が強い人が何人かいました。
そういった人たちは、仕事に入る時は必ずなんらかの魔よけのお守りを身に着けていました。お守りは、神社でもらった塩を小さな袋に入れて身に着けることが多かったようです。
中には、水晶を大事に持ち歩いている人もいました。
「これを持っていれば、近づいてこないの」
と、誇らしげに言っていたのをよく覚えています。
「えっ、夜勤なのに何もお守り持ってきていないの」
と、言われたこともあります。
霊感のないわたしは、塩や天然石など眉唾だと思っていましたし、それは今でもそうです。
霊感がある人は、怪奇現象には神経質になるようです。中にはホールのあちこちに白い小皿を置き、そこに盛塩をしている職員もいました。
夜勤入りの前など、念入りに場を清めていたようです。そうでもしないと、一晩中、首なし侍や、馬の足音などに悩まされるのだとその人は言っていました。
これだけ古くからの怨念があるならお祓いや土地供養をかなり期間をかけないと駄目ですね。
まぁ特養だからね…訳アリの安い場所に建てがちだよね。