曲がり角の黒い服を纏うおばあさん
投稿者:くま (10)
これは、住んでいる集合住宅の中の、ある曲がり角についての奇妙なはなしです。
数年前からここに住んでいます。古い集合住宅で、最初はとっつきにくい部分がありました。
未だに近所の人と顔を合わせるのが苦手なわたしは、ゴミ捨ての時は、誰も起きていない早朝に行くようにしています。
時刻はだいたい、朝の5時前後。
いつも車を使って捨てに行きます。運動のために歩いて行っていた時期もあるのですが、そうすると、どんなに早い時刻でも、足音を聞きつけて、話し相手欲しさにおばあさんが出てこられるのです。誰かと会えば世間話に付き合わされて時間を消耗してしまう。それか、こちらの様子を見られて噂話の種にされてしまう。それで、ゴミ捨てはいつも車を使うようになりました。
冬になると、5時頃はまだ真っ暗です。
ガードレール通りを進んで右折し、ステーションでゴミを捨てます。その後、そのまま直進し、突き当りの道で曲がります。集合住宅を右手に見ながらしばらく進み、やがて、わたしの家がある小道に入る曲がり角が現れるのです。
暗い中でこの曲がり角を曲がる時、いつもギクリとします。
常に、角を曲がった右のところ、車のすれすれ近くに、人が立っているように見えてならないのです。
あ、誰かいる、と思ってスピードを緩めるのですが、やっぱり誰もいません。でも、視界には必ず、黒い服を纏うおばあさんが一人、寒い空気の中、ぼんやり立っているのです。
電柱があるわけでもない、木もない。なので、何かと見間違うはずはないのですが。
毎回、奇妙な人影をかんじてしまうので、この曲がり角を通ってうちに戻るのは止めたほうが良いのかな、と、考え始めています。
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